ボスモンスターの攻略法⑦
『魔晶個体との戦闘において、戦力を削ぐという点からみても魔晶の回収は不可欠です。むしろ、それさえ実行できれば目的完了……不要な戦闘を避け、その場を撤退する選択肢も生まれます』
そう。俺たち召喚者の目的は、あくまで魔晶の回収だ。特異点という魔素溜まりに集まる高濃度の魔素を、その身にたっぷり吸いこんだ魔晶を集めること。それらを使って、世界を紡ぎ直す大魔法とやらを行使させ、元の世界に帰ること。
その地に棲み、攻撃してくる原生生物の排除は、本来忌避すべき事案だ。
可能な限り不必要な戦闘は避け、魔晶の回収のみに全力を注ぐことが最も望ましいテンプレートと言える。
『魔晶はその特性ゆえに、原生生物が自身の身に取り込んで、己が力量を高めることが多いのですが、そうした場合、その個体のどこに魔晶があるかは完全に不規則なのです』
あの竜みたいに外殻に備え付ける奴もいれば、飲み込んで腹の中に宿す奴も、果ては噛み砕いたり飲み込んだまま消化したりして、全身これ魔晶と化すような奴も過去いたらしい……そいつは魔晶の魔素回収力を制御しきれず、ちょっと攻め立てた刺激だけで物理的に破裂してしまったそうだが。
要するに、魔晶は魔素をより多く、かつ効率的に集める特性があるために、弱肉強食の世界で生きる野生の魔物が拾いやすく、拾われた魔晶がその後どこにあるかは、その魔物の行動次第で、外から見ただけではわからないと。
……話は分かったけど、腑に落ちない点がある。
「俺見えたぞ。魔晶があるのも。そこに吸い込まれていく魔素も」
『はい?』
外から見ただけでわかった。魔晶が火口湖に溶けだす魔素を吸い込んでいるのも、攻撃態勢の竜が能動的に集めるのも。
ていうか今も見えてる。
そんな趣旨のことを話すと、ディアナの返答がない。
『…………』
「あれ、聞いてる?」
再び声をかけるも、やはり返事がない。どうかしたのだろうか。
ややあってようやく、鈴が鳴るような声が再び聞こえてくる。
『……失礼しました。少々受け入れがたい事実だったもので。つまり、マスターは、驚くべきことですが、実に信じがたいことですが……魔素が肉眼で視認できるのですね?』
「そうだな」
ひょっとして、魔素が見えるのって、この世界のスタンダードじゃないのか?
でもあの戦闘の時、ディアナも『竜が魔素を集めている』って言っていたような気がするけど。




