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独白⑩

「きっと、心配をかけないようにしてくれているんだろうけど……そんなに頼り甲斐がないかしら、私たち」


少しだけ寂しそうに眉尻を下げ、渚様は続けた。

私は強く首を横に振って、その言葉を否定する。


「そんなことはありません。絶対に」


「ディアナさんの言う通りだ、母さん。何を隠しているのかは分からないが……それは悠葉の優しさ故だよ」


「……ええ。そうですね」


遥仁様は深く頷き、渚様の手に自身のそれを重ねた。

遥仁様の手を愛おしそうに見つめ、渚様の表情が安らいだものになっていく。


「でもね、ディアナちゃん。きっと、アナタたちなら、あの子は頼ってくれると思うの。アナタとアイリスちゃんは、こことは別の世界で、悠くんの力になってくれた」


マスター本人の口からご両親へと語られた、エーテルリンクでの日々。それを通して渚様が感じ取ったのは、マスターが抱く私達への信頼、だったと言う。


私も、アイリス様も、リラも。あるいは、道中出会った方々の誰が欠けても、今この時、マスターも私達もここにいることは出来なかっただろうと。


「それでね、直接口に出したわけじゃないんだけど、あの子が最も信頼を置いているのは……ディアナちゃん。アナタだと思うの」


「……え、あ。それは、その。何と申しますか、光栄ですというか」


ま、まさかお二人()てにマスターが私をどうお思いなのか、知ることになろうとは思いもしなかった。


なんだか恥ずかしい。冷たいお茶で冷ました筈の身体が、再び熱を帯び始める。頰が熱いが、赤くなっていたりしないだろうか。


揉み解すように顔の熱を確かめる私だったが、遥仁様と渚様は、いたって真剣な表情だった。


「だからね、ディアナちゃん」



あの子を、よろしくお願いね。



……そのお言葉を聞いた途端、頰に宿っていた熱が急速に引いていった。


そして対照的に、胸の奥でポッと小さな火が灯るような感覚を覚える。


この感覚には何度か覚えがある。


ベロニカでマスターの頰を叩いて諌めた時。

マリーネでアイリス様と共にステージに向かった時。

そして……トレイユで、操られていた私をマスターが、救ってくれた時。


「……お任せ下さい。遥仁様、渚様」


この感覚が何なのか、今ならはっきり分かる。

これは決意だ。


胸に手を当てる。その奥底で静かに、だが確かに燃え盛る炎の熱を確かめるように。


「私は、マスターの響心魔装(シンクロ・デバイス)ですから」


目には見えないその熱を届けるために、言の葉に強く想いを乗せ、私はそう答えた。

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