憂鬱な金曜日⑥
あっそうだそういう話だった!
ディアナの新たな能力にとらわれ過ぎて、話の本筋を完全に失念していた。言われて気付き、「それでも学校には来ちゃダメ」との言を返そうとしたのだが。
『はいっ。お任せください、マスター!』
見るまでも無く、目を輝かせた返答をくれた相棒の顔が脳裏に浮かび、俺は口に出しかけた言葉をぐっと飲み込まざるを得なかった。
いやね、ものっそい張り切ってるディアナの心境が分かるんだよ、今の状態だと。
目をきらきらと煌めかせ、狐耳をピーンと伸ばして、あるはずの無い尻尾をブンブン振っている相棒の姿がありありと目に浮かぶようだ……そんなディアナの姿を空目しそうなほどに、彼女の感情が伝わってくる。
そんなに無垢な瞳で見つめられて断れるはずもありませんよ。
……いやまあ、そのディアナの姿は俺の脳が作り出した幻想なんだけどさ。
一方で、俺がそんな感覚を覚えているということはディアナには伝わっていないようで、俺の妄想に対するこれといった言及は無かった。お互いの心情がより伝わりやすくなっていながら、隠したいと感じていることまでは伝わらないようになってるんだな、うん。
「……仕方ないかあ」
「はいっ!」
観念した俺のその言葉を承諾と受け取ったらしく、ディアナは元の少女の姿へと戻り、形の良い眉をきりりと引き締める。
「あ、話まとまった?」
「ディアナちゃん、凄いわ。そういうことも出来るのねー」
食後の後片付けを済ませたらしく、リビングに戻ってきたアイリスと母さんが感想を漏らす。
……それにしても母さんの順応度が高すぎるよな。嫌いなものは無いと聞いたことはあるけど。
昨日なんて、ディアナが頷くや否や狐耳に飛びついていたし。父さんが引きはがさなかったら無限にホニホニしていたんじゃないだろうか。
「これで安心ね。明日一日頑張ればまたお休みだし、気兼ねなく行ってらっしゃいね」
「はーい……」
手を合わせてニッコリと微笑む母さんに、いよいよ逃げ場が無くなったと諦める……ははは、明日の時間割何だっけ。
本来なら週末休みの直前で、むしろテンション的には上げ調子になる筈の金曜日に、俺は憂鬱さしか感じられなかったのだった。




