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憂鬱な金曜日③

サンファの監視という点で見ても、アイリスは俺やディアナよりも適任だ。流石は俺の頼りになる相棒。誰もが納得する折衷案を提案してくれ……あれ。ディアナ自身のことについては触れていないような。


俺がようやくそのことに気付き、指摘しようと口を開きかけた時、先んじてその解答はディアナ本人から発せられた。


「はい。そして明日は、マスターと私が学校に向かう、と」


「いやいやいやいや!」「何それディアナズルい!」


ガタタン!! と音を鳴らして俺とアイリスが立ち上がる。が、「食事中に騒いじゃいけません!」との母の一声に、すぐさましずしずと腰を下ろす。


「ズルくなどありません。これは当然のことなのです。私はマスターの響心魔装(シンクロ・デバイス)なのですから、常に主の傍に()らなければ」


説明を求める俺たちの視線を受けるも、銀白の少女は頭上の狐耳をピンと立て、自信満々そうに答えた。


いやいや、そうだけど、ディアナは確かに相棒だけどもさ。ココは地球でエーテルリンクじゃないし、道中魔物に襲われるなんて心配は無用なわけだしさ……


そう説明するも、相棒の決意はどうにも固そうで、頑なに首を縦に振らない。


「いいえ、マスター。魔物に遭遇する危険度の問題ではありません。私が学んだ情報によると、カガクの発展したチキュウでは、クルマなどの機械による事故も多いと聞きます。危険な場所に近寄らず、何事も無く過ごしているつもりでも、そう言った事故に遭ってしまう可能性は常にあると……」


ディアナが強い目で俺を見据える。相当に低い確率のことを心配するのは気にし過ぎとは思うが、事実と言えば事実であるだけに反論し辛い。


「やっ、それは、そうだけど……そ、そうだ! いくら相棒とはいってもディアナは学生じゃない。学校に関係する人間じゃないと、中には入れないんだぞ」


「そ、そうよディアナちゃん。明日は私やアイリスちゃんたちと一緒に居ましょう?」


母さんも、これだけディアナが強固に同行を主張するとは思っていなかったのだろう。思わずといった様子で俺の肩を持った発言をしてくれる。


が、ディアナはその俺の指摘さえも予想していたと言わんばかりに、小さくドヤ顔を作ると。


「その点は問題ありません、マスター。でしょう?」


「……え? ああ……大丈夫なんじゃないかい……?」


顔面蒼白すら通り越した灰色の顔色を作って茶碗を処理し続けるクソイケメン魔術師へ、そう呼びかけたのだった。

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