憂鬱な金曜日②
「……なんだい? 生憎今の僕は、キミらのじゃれ合いに付き合うだけの体力は無いんだけどね……」
ボソボソと生気のない声で零すクソイケメン魔術師の表情は、真っ青を通り越して蒼白だ。
体調が悪そうだな。今の話も聞いてなかったみたいだ。無意識にスプーンとフォークを――箸はディアナしか使えなかった――口に運んでいる。
「あらサンファさん、顔色が良くないわ。もっとご飯を食べなきゃだめよ」
「いえ母君、これ以上はもう充分で……あ、ああ、空いた茶碗に追加のオコメをよそうのはお止めください!」
ふむ。今日の練習メニューがしんどかったんだろうか。そんな難しいことはしてないんだけどな。
苦労して空にしたらしい茶碗をつやつやのご飯で満たされ、更に顔を青ざめさせる魔術師の様子に、俺は今日一日を振り返る。
日課のトレーニング(早朝版)を終え、クールダウンのジョギングを済ませたディアナ・アイリスと合流しマンション裏手の河川敷で柔軟体操。
参考として他アイドルのライブ映像をスマホで流し、ライブにおけるコールとは、という概要を説明。
ルナちゃんの曲ごとのコールタイミングを印刷した用紙を配り、まずは曲を流しながら個人練習をさせて、しばらくしたら全員で通してやってみてー……
体力づくりのための走り込みなんかもやったけど休憩はちゃんと挟んだし……
「それを夜明け頃から宵の刻までぶっ続けでやるのがおかしいんだよっ! いくら休憩を挟んだって限度というものがあるだろう、限度というものが!?」
追加されたご飯をヤケ気味でかっ込みながらサンファが抗議を述べる。
……言われてみればそうかもしれないな。エーテルリンクでは、暇な時間のディアナとアイリスはずっとこんな調子だったから、俺も麻痺してた。地球ではまあ有り得ないかもしれない。
そんな様子を見たら、俺が不調と訴えても流石に母さんも納得しないだろう。
この少しなりともズレた感覚を直すという意味でも、学校、行かなきゃダメ、かもしれない……
「それでは、こう致しましょう」
そんな俺の胸中を察したのか、ぐぬぬ、と唸り出した俺と、ふくれっ面のままぶーたれるアイリスを見て、向かいの相棒が手を叩いた。
「アイリス様、明日はサンファ氏の体調に沿ったトレーニングメニューの監修と、実際のコーチングをお願いします。ご自身で普段のトレーニングメニューを考案したアイリス様なら可能でしょう」
「えー。でもぉ」
「いけませんよ。そも、マスターの学校も、事前の許可なく見学出来るとは限りません。エーテルリンクでも、余程の事情が無ければ通常、地位ある方への謁見は、前もって話を通さなければいけないでしょう?」
「……むぅ。仕方ないわね……」
流石ディアナ! 渋々と言った様子ではあるが、アイリスを見事に納得させた!
思わずガッツポーズをとる俺の隣で、外見にそぐわぬほど大人びたディアナの振る舞いに、母さんが感心させられている。




