女王と女王と少女魔装⑥
「どういう意味ですかぁ?」
「あの狐は、最初はチキュウなんぞに転移魔法陣を繋ぐつもりなんて無かったのさ。全くの偶然だったんだ」
「……もうちょっと分かりやすくお願いしますぅー」
「つまりだな、サンファが繋ぐつもりだった世界はチキュウじゃあなかった」
奴は、創造神のいる……『神界』へ繋がる魔法陣を生み出そうとしていたのさ。
「……はああああ!?」
スプリングロードゥナのその発言を聞き、物静かに伝記を読み進めていたイルミオーネが、たまらず反応した。
「神界だと!? そんなもの、御伽噺の世界の存在じゃないか!」
「たしかぁー、空よりもずぅーっと高いところにある、天上の世界……とかって話ですよねぇー。本当にそんなのあるのかなぁ、って思ってましたぁー」
サンファの試みよりも、その前提である神界の存在に否定的な二人へ、腕を組んだスプリングロードゥナが答える。
「まあ、そう思う気持ちは分かるさ。私も己の目で見たことは無いからな」
神界は、神々が住まう……というよりは、神々の集まる場所、として伝えられる異界だ。
そこは、エーテルリンク人が住まう大地よりも、その頭上に広がる天空よりも更に上にあるとされ、エーテルリンクを創造した世界神が住む場所であり、他の神々の集う憩いの場であると伝えられることが多い。
伝えられると言っても、神界のことを記す書物は軒並み子供向けの御伽噺ばかりのため、エーテルリンク人の多くはその存在そのものに懐疑的である。イルミオーネとダリアもまた、その中の二人だ。
しかし、彼らよりも『神』という存在に近い神位魔術師にとってはそうではない。
神位魔術師たるスプリングロードゥナやサンファにとって、神界とは遥か彼方ではあるが、確かに『現存する異界』なのだ。
神位名を賜る際、神の存在を最も身近に感じるそのタイミングで、神界の存在もまた、彼らには現実のものだと感覚で認識出来るのだ。
そして……スプリングロードゥナの思考は更に加速する。
創造神。神界。転移魔法陣。響心魔装。地球。心素。世界崩壊。
それらの要素から導き出される答えは。
「奴は……そうか――」
思考する黒髪の女王の脳が、一つの結論を導き出そうとした瞬間。
――ドッゴオオォォン!!! と、身を震わせる程の轟音が部屋の外で響き渡り。
「お゛お゛ぉい!!! どこに居やがンだぁ!!? あンのクソイケメン狐はよぉぉお゛!?」
その轟音に劣らぬ声量で荒々しい怒りの声を発し、一人の男性が足元の瓦礫を蹴飛ばしながら工房へと姿を現した。




