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この子にしてこの親あり⑧






俺の言葉を鵜呑みにし、駆け足でディアナの耳へ向かおうとする母さんを父さんに任せ、俺は一人、ディアナ達の待つ自室へと向かった。


久方ぶりの自分の部屋。そのドアの向こうにあったのは……先ほど母が知らせた、冗談としか思えない光景そのままだった。


「あ、ユーハ。話は済んだの?」


「ああ、うん……ちゃんと理解してもらえたと思う……」


「そ。なら良かったわ。サンファ様のせいで、余計な不信感持たれてないかって心配してたのよ」


「ああ、うん……大丈夫だった……」


「? ちょっとアンタ、なんか上の空じゃない? さっきからどこ見てんのよ」


会話している最中も、俺の視線が一転に集中して動かないことに気付いたアイリスが首を傾げる。

それも仕方ない。自室に入ってからというもの、俺の視線は、床に四肢を付けてアイリスに腰かけられている、エーテルリンクの神位魔術師様その人に注がれ続けていたのだから。


「……何やってんだ」


「僕だって好きでこんなことしてるんじゃないよ……」


俺の両親へイキイキと話し続けていたときとは打って変わって、顔面蒼白で乾いた笑みを漏らすサンファ。事情の説明を求め、ようやく俺はアイリスの方へ視線を向ける。


視線で訴えてくる俺を見たアイリスは、俺の本棚から目ざとく見つけたらしい、ルナちゃんの写真集を溜め息と共に閉じると、組んでいた足を組み直した。


「アンタが見張っててくれって言ったんじゃない。でもアタシも読みたいもの見つけちゃったし、ずっと見続けるなんて無理だったからこうしたのよ」


「もっとやり方があるだろう他にも!?」


「うるさいですよサンファ様」


「あ、ごめんなさいごめんなさい。跳ねないで!」


反論したサンファの背の上でぐいんぐいんと跳ねるアイリス。サンファの背筋が、いや、背骨がいつまで持つだろうか。


あれ。そう言えば、ディアナの姿が見えない。


俺の部屋は六畳ほどしか無く、勉強机、ベッド、本棚が壁際に沿って並んでいる。

フリーな床スペースには今、四つん這いのサンファと、その背に腰かけるアイリスがいて、他に余裕は無い。となると後は、壁の一面にあるクローゼットの中……ってそんなわけないだろうから……


俺はよく見ると少しだけ膨らんでいるベッドへと近付き、ゆっくり掛布団をめくり上げる。


「あ、やっぱここか」


「……っ!? ま、マスター! い、いつの間にいらしていたのですか!?」


そこに小さな身体で籠っていたディアナが、ぼうっとしていた表情を一瞬で驚愕に変えて飛び起きた。


頬がほんの少しだけ赤らんでおり、驚きの度合いを示すように頭上の狐耳がピンと逆立っている。そして、何故か俺の枕を腕に抱いていた。

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