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この子にしてこの親あり③

「それで……今までいったい、どこで何をしていたの? ちゃんと説明してくれるんでしょう?」


「もちろん話すよ。だけどその前に……」


未だに俺を離さないまでも、多少の落ち着きを取り戻した様子の母さんへと、外で待つディアナたちのことを話そうとした俺の目に、リビングからのっそりと顔を出す父親の姿が写った。


「あ、遥仁(はるひと)さん! ほら、私たちの息子が帰ってきましたよ!」


それを察した母が、背後を振り返りながら、父へ向かって俺のことを主張する。


俺の父、篠崎遥仁は、節立った指で四角い眼鏡のブリッジを上げると、静かな声音で一言、


「……悠葉、か?」


俺の存在を確かめるように、そう呟いた。


「た、ただいま、父さん」


少しばかりドギマギとしながら、俺はそう返答する。


俺の知る父は物静かで、余り自分の意見を口にすることがないという印象が強い。ごく簡単な、例えば夕飯の献立なんかを母に問われた時、いつも俺の意見を待ち、それがそのまま採用されたり、などだ。


しかし、俺が真剣に悩んでいる時や、母がしっかりした回答が欲しいような問いを投げかけた時などは、その厳かな声音で頼もしい言葉をくれたものだった。


そんな、物静かではあるが自分の中に一本の強い芯を持ち、正誤を判断出来る父に……俺は、拳骨の一つも貰ってしまうかも、と思っていたのだ。


家族に何の連絡もないまま一ヶ月も行方が知れなかったというのは、父の判断基準ではきっと明らかな粛清対象だろう、と。


ゆっくり俺と母に近付いて来る父の姿に、身体が少しだけ硬直する。


……しかし、そんな俺の予想とは裏腹に、父が俺の頭に乗せたのは、その大きな手のひらだった。

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