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こういうのも家出になってしまうのだろうか⑤

ゲホゴホとやや大げさ気味に咳き込むサンファの姿に若干ヒいていると、どこか満足げな様子のアイリスが俺の方を向いた。


「んで? これからどうするのよ。一応ルナのライブ当日までは、まだ四日あるんでしょ?」


「あ、ああ。そりゃあ三人には、ルナちゃんのライブに参戦して恥ずかしくないようなコールを身に着けてもらうために練習をだな」


「違う! そういうことじゃなくて、このあとの具体的な行動よ」


ああ、そういうことか……

金髪の少女が垣間見せたサイコな一面に窮していたためか、見当違いな回答をしてしまった。


そうだな。とりあえず俺の家に……あ。


「? どうかされましたか、マスター」


そこまで言って固まった俺に、ディアナが首を傾げて問いかけてくる。


いや……今更に思い出したのだ。

俺はこの地球で約一ヶ月もの期間、行方をくらましていたということを。


それもこれも全部、未だにそこで呻き続けているクソイケメン魔術師のせいなのだが、それを責めたところで時間は巻き戻ったりしない。紆余曲折を経て異世界での強制労働を終え、地球に戻ってきたとはいえ、俺がその間この世界にいなかったという事実は変わらないのだ。


その間、俺の家族は、両親はどうしていたのだろう。


かつて俺は、幽霊が見えてしまうがために周囲から虐めを受けていた時期があった。

当時の俺の事情を察した両親は、その地を離れ、生活を仕切り直すという結論を出してくれた。仕事も、それまで暮らし慣れた土地も省みずに。


……親子仲は不仲ではない、と思う。


きっと心配していただろう。いや、今も尚しているかもしれない。

警察をはじめ、周りの人に協力を仰いで俺を探したりしているかもしれない。


俺の意思で身をくらませたわけではないにしろ、結果的にそうなってしまったという事実がある。


多大な心労と、苦労を掛けているに違いない両親へ対し、どんな顔をして家に戻ればいいのか。


地球の地に足がついた今のタイミングになって、そんな申し訳なさと気恥ずかしさを混ぜた感情が俺の中で渦巻き始める。


しかしその複雑な感情は不可視の鎖となって俺を縛り、確かに俺の足をその場に縫い止めていたのだった。

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