こういうのも家出になってしまうのだろうか④
「え? 何この状況。キミら何する気――」
「かかれ!」
「はいっ!」「よしきた!」
合図に従い、俺がサンファの右腕と杖を、アイリスが左手に掴みかかり、がっしと固定する。
そして間髪入れずにディアナが肉薄し、サンファの左手と懐から、魔晶の魔素が込められた指輪を回収した。
「あっ!! ちぇー、忘れてなかったか」
ふくれっ面で子供染みた不平を漏らすクソイケメン魔術師。
顔が良いから余計に腹が立つな……そのモデル顔負けの細面でほっぺ膨らましてんじゃねーよ。
しれっと言いやがったが、きっとサンファは、俺たちが本当にこの指輪の存在を忘れていたら、これを使ってさっさとエーテルリンクに帰っていただろう。事実、見たところ指輪には復路分として充分な魔素が残っている。
預かっておかなきゃ、いつよからぬことに悪用されるかわかったもんじゃないぜ。
心配事を一つ処理したことに肩の力を抜きつつ、俺は金髪の少女に呼びかける。
「アイリス、ついでに登録? とかいうのもやっといてくれ」
「ああ、首輪のね。こうでいいのかなー」
「あたたたたた!? ちょ、ちょっとキミたち、もう少し間接に負担をかけない体勢にして頂けない!?」
サンファを羽交い絞めた状態のまま、アイリスが強引に右手を伸ばす。
俺は両腕でサンファの腕を掴んでいるが、よく見ればアイリスは、魔術師の左手首を左手でグッと握り締めて引っ張っているだけだ。それでがっちりと動きが固定されているあたり、彼女の身体能力がサンファを遥かに上回っているんだと分かる。
俺も俺で、この胡散臭い魔術師が妙な動きが取れないよう力を入れているせいで、アイリスに無理やり引っ張られるサンファはしゃちほこ状態……海老反りに近い姿勢になってしまっている。
はは、苦しそうでやんの。
俺ももうちょいあらぬ方向に引っ張ってやろうかな。
なんてかわいい悪戯心が芽生えたのだが、俺が実行に移す前に、アイリスが首輪の登録を終えてしまったようだった。触れて魔素を流すことで登録できるのか。へぇー。
それを確認した俺たちはようやく、背中を反らし続ける魔術師を拘束から解放する。蹲って身もだえするサンファ。
「き、キッツ……あーこりゃ明日は筋肉痛、だよっ、ゴレぇ!?」
「あ、ちゃんと効いてるわね。よし」
年寄り臭いこと言うなぁ……と思った俺の前で、サンファの声音が奇妙に裏返る。
見ると、首の白い首輪が光りながら収縮している。隣に視線を移すと、アイリスが無表情に魔素を垂れ流していた。
……こっわ。
苦しそうに喘ぐサンファの姿をじっくり二十秒ほどは見てから、ようやっとアイリスが魔素の放出を停止する。




