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こういうのも家出になってしまうのだろうか③

俺の差し出すライブチケットに、得体のしれないものを見るような目つきを向け続けるサンファ。


……なかなか受け取りやがらないな。本来はリラに渡したかったものを仕方なーくお前に譲ろうとしてる、っていう背景は理解してんのかコイツ。リラが万全ならお前は候補にも挙がってないんだぞ。


仕方ない。受け取りたくなるような言い回しをしてやるか。


俺は短く息を吐くと、チケットを持っていない左手の人差し指をぴんと立てた。


「じゃあ、こういう考え方はどうだ。俺たちはお前を倒したよな? 一応は」


「……まぁー、ね。本ッ当に、ギリギリ、創造神やら天壌紅蓮(てんじょうぐれん)やらいろぉーんな運が全部キミらに向いていたおかげで、ね??」


今にも歯ぎしりして悔しがりそうな苦々しげな表情で、サンファがそう吐き捨てる。

……創造神とかは知らないけど、まあかなり俺たちがツイていたのは、実際そうかもしれない。


「ともあれ、そういう意味も込めて、俺らはお前を退けただろ? んで、その最大の要因とも言えるのが、ディアナやアイリスの心も含めて一つにした、『ルナちゃんのライブ』なわけだ」


「ははあ。つまりアレかい。このらいぶとやらに参加することで、神位魔術師をも撃退できるほどの心素(エナ)をキミらが生み出すことが出来た、その秘訣が分かるって言いたいのかい」


そういうことだな。


本当ならそんな考えはライブ参戦においてちっっっとも必要な心持ちじゃないんだけど。

多分コイツはこうでも言わなきゃ首を縦に振らないだろう。


事実、俺のその言葉に、サンファは少なからず関心を惹かれたようだった。さっきまでは、今にも目を背けたくて仕方ない、といった顔つきだったくせに、今は俺の言葉を反芻し思案する、神妙な面持ちに変わっている。


そういえばコイツは、心魂奏者(しんこんそうしゃ)と呼ばれる、人の精神操作が得意な魔術師でもあったっけ。人心を惹き付けるアイドルという存在に、気にかかる部分があるのかもしれない……そういう風にルナちゃんを見て欲しくは無いんだけどな。


そして幸か不幸か、サンファは非常にゆっくりとした動きで――手を伸ばす最中も逡巡している様子で――俺の差し出すライブチケットを取った。


「ま、くれると言うなら頂いておくよ。何かの役に立つこともあるかもしれないからねぇ」


「嫌味な言い方しかできないのかお前」


……まあ何にしても、その気になったのはいいことだ。


で、そのためにはまずやんなきゃいけないことがあるんだよな。


「ディアナ」


「あ、はい。マスター」


「……? ああ、なるほどね」


俺が声をかけると、頼もしい相棒はすぐに意を汲み、サンファの正面に立ってくれた。アイリスも一拍遅れたものの、俺と対照的な位置に移動し、三人でサンファを三角の形で取り囲む姿勢を取る。

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