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こういうのも家出になってしまうのだろうか②

「で? いったいどういう了見なのかな、この仕打ちは? まさか自分が強制的に異世界転移を受けたから、その意趣返し、なんてしょーもない理由じゃあないだろうね」


自由になった腕を胸の前で組み、憤慨を露わにするサンファ。対し、その人となりを知る少女二人は、頬に冷や汗を浮かべて身構えた。


「マスター。何故、この方を……」


脳内に響いた謎の声への思案から一転、瞬時に緊張を張り詰める相棒が問いかけてくる。


「そうよユーハ。今はこんな風にのらりくらりとしてるけど、さっきまでアタシたちを本気で殺そうとしてたヤツよ? ……今までやって来たことだって、絶対許されることじゃない」


アイリスもまた、サンファを睨みながら再び戦闘体勢に移行しようとしている。


……言いたいことは分かる。コイツは俺たちの前に何人もの地球人を、響心魔装(シンクロ・デバイス)たちを騙し、罠に嵌め、その命を奪って来たのだ。


その罪は償わせなければいけないのかもしれない。スプリングロードゥナたち、向こうの世界の人に任せ、相応の罰を与えるのが筋なのだろう。


こんな大量殺戮犯、異世界人であることも含め、俺はこれまでの人生で出会ったことは無かった。そんな奴の思考回路がいったいどうなっているのか、俺の理解の範疇には無い。


でもだからこそ、そんな奴が逮捕されたからって、ハイそうですかとすんなり心を入れ替えるとも思えないんだよな。


「そこでこれだよ」


「……それは」


俺が取り出したのは、ブレザーの内ポケットに納められていた、チケット用の緑封筒。その中には、俺自身のものともう一枚、使用者の決まっていないチケットが入っている。


その、最後の一枚を、クソイケメン魔術師に向かって差し出した。


「お前の事情も何にも知らないけど、あのままスプリングロードゥナたちに任せるっていうのもちょっと気になったからな。ルナちゃんのライブを見て、もう少し人の尊さを学べよ」


ルナちゃんにはきっとそれだけの魅力があると、俺は信じて疑ってないからな。


どんなに冷徹で血も涙もない様な人間でも、胸を打たれてさめざめと涙を流すに違いないんだ、うん……まあ、大分突発的な勢いで連れてきてしまったことは否定しないけれど。


……それともう一つ、単純にコイツに対抗できるのが、下手したら俺たちだけかもっていうこともある。


あのスプリングロードゥナでさえも、一度はサンファの精神支配の影響下にあったのだ。

考えたくもないが、また同じことが起こる可能性はある。きっとそれはあの黒髪の女王も把握していることだろう。

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