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こういうのも家出になってしまうのだろうか①

ポーン。


「……?」


何だ今の音。


金色の輝きに視界がいっぱいに満たされ、おそらく転移の真っ最中であろうと思われる俺の耳に、聞き慣れたPCのポップアップのような音が聞こえてきた。


今、周囲は俺を包む金色の輝きの他には、宇宙空間にも似た、暗くもどこか透明感のある漆黒の空間が遥か彼方まで続いている。転移の途中である故か、周りにいたはずのディアナ達の姿も無い。


エーテルリンクに強制召喚を受けた時と同じ光景だ。

あのときは落下していくような感覚も一緒だったが、今回はそれとは逆に浮き上がるような体感がある。エレベーターで上階に向かっている気分だ。


その場には果ての無い宇宙の闇以外に、人の手による建造物や自然の岩・植物なども一切存在しない。ただ無限に広がる夜色の空間の中、俺が一人金色の輝きに包まれているだけだ。


それ故に、電子音が鳴るようなものは何にもないはずなんだけど――


金の光に目を細めつつ周囲を見回す俺の耳に……いや、脳内に直接、再びどこからか音が響き渡る。


『――神位を二つ(くじ)きし者よ。汝に神位名『黒神位(こくしんい)』を授与します』


「……んんん???」


男性とも女性ともとれる、その中性的な声音の意味を図りかねる俺の視界が、再び金色の光で満たされた。






……ここは……?


眩んだ眼を瞬かせ、回復していく視界の中に、見慣れた地球の遊具……鉄棒やブランコ、ジャングルジムなどが映ってくる。


俺たちが転移したのは、俺の通学路にある公園の中だった。時刻は丁度朝日が差し込み始めた頃合。普段そこの住人と思われる子供たちの姿は無く、公園も周囲の道路も、静寂な雰囲気に包まれている。


「今の声、は……?」


隣で、ディアナが小さく零した声が耳に届く。

どうやら彼女にも俺と同じ声が聞こえていたらしい。誰のものなのか心当たりはないようだが。


「こ、ここが、チキュウなの……?」


俺と同じように瞬きを繰り返し、アイリスが辺りを見回す。

周りのものばかりに気を向けている様子からすると、アイリスにはあの声は聞こえていなかったんだろうか?


謎の声の正体に思考を回していると、機嫌の悪そうな声が不満を漏らしてくる。


「空気が汚れてるねぇ。魔素(マナ)も薄いし……ちょっと、いい加減腕を放しておくれよ」


「あ、悪い」


クソイケメン魔術師、サンファに指摘を受けてようやく俺は、未だに自分の右手がサンファの腕を掴んだままであることに気付いた。さっきの転移途中の宇宙空間では影も形も無かったのに、いざ転移が完了するとまた元に戻っているとはどういう仕組みなんだろうか。

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