夜と共に駆ける者⑫
次の攻撃が、サンファの全霊の一撃であるだろうことが、俺にも肌で感じられた。
あれに対抗するには、あの技しかない。
「ディアナ、アイリス!」
『はい!』「分かってるわよ、っと」
背を向けたアイリスは、夜剣状態のディアナを携えたまま俺に背を預ける。
背後から金髪の少女を抱き込んだ俺は、アイリスの手の上から夜剣の柄を握り込んだ。
二人の心素をディアナへと集め、重ね、一つに溶かす。
三人の呼吸を合わせていく――
……その先で、サンファの注ぐ魔素と、魔装らが研ぎあげる心素が、共に最高潮に達しようとしていた。その身に絡みつく魔装たちが口々に同じ言葉を発し、あたかも輪唱のような声音が響き渡る。
「魔素接続、過剰承認」「響心率、三〇〇パーセントに到達」
「状態、響心過剰へ移行」「練度昇華――」
後から遅れて続いていた言葉たちが、少しずつ最初の言葉に追い付き、締めの一言で全員の声が揃う。
「「「「「「「――ソウルドライブ」」」」」」」
式句に伴い、集められた魔素と心素が膨れ上がった。
最早俺の目にも補足しきれないほどに絶大なエネルギーが、魔装たちの身体で交じり合い、再びサンファの下へと一つになる。
「消えろッ! その身を愛した、創造神の名残と共に!!」
全てのエネルギーをその身一つに宿した魔術師が、憤怒の形相と共に、叫んだ。
「天空を覆え、母なる大地――!!!」
サンファの眼前の床が、ヒビ割れた。
亀裂は瞬く間に広がり、床を裂き砕き、ここが城の中とは思えない量の瓦礫と石柱が生まれる。そして亀裂の内部から溶岩が溢れ出で、瓦礫と混じって灼熱の奔流となり、全てを飲み込み向かって来た。
……触れただけで絶命は必至。
でも、俺たちに退く選択肢は無い!
「これで最後だ。ここを乗り越えて、全部終わらせて、行くぞ!」
『みんなで、一緒に……!』
「ルナのライブに、ね!」
前置きも無く再確認するその言葉に、俺たちの意思が一つになる。
三人の心意を纏う夜剣を振り上げ、心を合わせる。
『生命回路、三鏡構造を形成。闇夜神路、練度亜変――成功、しました!』
ディアナの声が脳内でこだまする。
……溶岩だろうが神位魔術師だろうが、関係ない。
何が相手でもこの一振りで乗り越え、俺たちは、ルナちゃんのライブに行くんだ!
迫りくる奈落そのものへ、全てを込めた夜剣を、振り下ろす――
「「『三界・闇夜神路!!!』」」




