夜と共に駆ける者⑤
アイリスとの連携を崩し、俺を物量で始末するつもりか。
魔装たちによる、心技や直接攻撃を織り交ぜた数々の一撃が絶え間なく襲い来る。
単純な頭数が増えたことにより、俺が捌ける量を遥かに超えた手数で攻め立てられてしまう。必然、躱しきれない心技や刃が俺の身体をかすめ、直撃には至らないまでも、確実なダメージを残す。
このままじゃマズい。この包囲網を突破する方法は一つ。
俺はかつての荒天島での戦いを思い返した。
魔晶個体たる巨大植物の部下とも取り巻きとも言える、動く人型の木々。アレに取り囲まれた記憶を。
当時は状況的にその手は取らなかったが……今はあの時とは違い、目くらましの霧は存在しない。
――月神舞踏だ!
言葉を発するまでもなく、俺とディアナとを結ぶ生命回路が、正しく俺の意思を相棒に伝えた。
一度脈打った夜剣が夜色の粒子に解け、俺の全身を瞬く間に包み込む。
「う、おおおおおっ!!」
その間も尚、攻撃の手を緩めない響心魔装たちを、俺は闇雲な体当たりで強引に押し返した。左の肩口を魔装の爪が削り、二筋程の切り傷が残る。
しかし、それと引き換えに生まれたほんの僅かな隙で、俺の身体を夜色の強化鎧が覆い尽くした。
『魔装形態、月神舞踏への変換が完了しました。マスター、肩はご無事ですか?』
「ちょっと引っかけたくらいだ、大丈夫。さあ、蹴散らすぞ!」
『はい!』
身体を気遣ってくれるディアナに答え、俺は膝を沈めた。心素が相棒へと流れ、加速度的に俺の意識が引き延ばされていく。
迫り来る魔装たちの姿がスローモーションになり、それと共に、眼前の空間に夜色の魔法陣がいくつも展開される。
地を蹴り、空中に躍り出る。
右足を伸ばし、声高に叫ぶ。
「『虚突曜進!!』」




