独白⑥
その人は、固く閉ざされた工房の扉を破壊しながら現れた。
魔晶個体の攻撃を直撃したらしく、しばらくの間意識を失っていたが、ズタボロの身体を引きずって、私の眠るカプセルの前までやって来てくれた。
凍結から目覚め、半ば強引に主従契約を迫った私のことを、受け入れてくれた。
……彼が私に差し出してくれた右手を、鮮明に覚えている。
今まで、私に手を差し伸べてくれる人はいなかった。それまでの召喚者たちの手は全て、私ではない別の魔装たちに向けられていたのだから。
その時初めて、私は他の魔装たちに差し伸べられる、手が羨ましかったのだと気付いた。
私のために伸ばしてくれた手を、取る――
――今、私の目の前には、あの時と同じ右手が差し伸べられている。
それを皮切りに、彼と出会ってから体験した全ての出来事が、目まぐるしい勢いで、それでいながら鮮やかな色彩を一切失わずに脳裏を駆け巡る。
思い出す。初めて通わせた、マスターの心素の鼓動を。
思い返す。憧れと足並みを揃え、アイリス様と高め合った練習の日々を。
思い起こす。三人で打ち破った紅蓮の神槍を……眩しく煌めく、ステージの景色を。
マスターの、声が聞こえる。
「お前は、ソウルなんたらの一人なんかじゃ、ないだろ」
頭の中の何かにヒビが入っていくのが分かる。
見えない呪縛が弱まっていくのを感じる。
「お前は、俺たちの仲間で……俺の、相棒で!」
その一言一言が私の存在を証明してくれる。
私が『誰なのか』を、思い出させてくれる。
今の私は、一人寂しく孤独に生きていた『ディアセレナ』では、もうない。
今の私を顕す名前は、あのときマスターが、その暖かな右手と共に与えてくれた。
私は――
「アイドルユニット『空に輝け』のメンバー! ディアナだ!!」
そう――私の名前は、ディアナ。
国家への反逆のために造られた兵器でも、神位魔術師の手先たる兵士でもない。
アイリス様と共にアイドルを目指し。
マスター、ユーハ様の相棒である響心魔装。
それが私……ディアナ、だ!




