糸目か細目の奴って大体黒幕⑨
「……なあ。思い、出せよ。お前は、ソウルなんたらの一人なんかじゃ、ないだろ」
そうだ。ディアナは、そんな訳の分からない言葉で十把一絡げに称されるようなものじゃ、絶対に無い。
俺たちの中で一番に生真面目で、こんなにちっさいのに頼りになって、俺が迷ったときには背中だって押してくれて、間違えたときには叱ってくれて。
憧れた存在に近付くために努力して、仲間でありライバルであるアイリスと一緒に切磋琢磨して、あんなにでっかいステージを成功させて。
三人で、ルナちゃんのライブを観に行くって、約束した――!
抱き留めた胸の内で、ディアナが小刻みに震える。俺の腕を再び振り払おうとしているのか、それとも、呼びかけに答えようとしてくれているのかは分からない。
いや、もういっそそれはどっちでもいいことだ。
きっとディアナに届いていると信じて、言葉を続けるだけなのだから。
俺は、優しく頭を撫でていた右手を下ろし、少女に向かって差し出した。
「お前は、俺たちの仲間で……俺の、相棒で! アイドルユニット『空に輝け』のメンバー! ディアナだ!!」
俺の言葉を聞いたディアナが、ピタリとその動きを止める。
「ディア、ナ……?」
一人、サンファが訝しげな声を漏らしたが、今はそれに構う暇すら惜しい。
ディアナの様子に改めて注力すると、銀白の少女は、空気に溶けて消えてしまいそうな弱々しい声音で、ポソリと呟いた。
「空に、輝け……」
「ああ、そうだ。月と太陽にピッタリな名前だろ?」
……実は、ディアナとアイリスには内緒で、こっそり考えていたんだ。
マリーネでのライブが終わった、宴会の席で。アイリスが自分勝手に次回のライブツアーを宣言したときに、ふと思った。二人の、アイドルユニットとしてのユニット名が無いなって。
だから、二人にピッタリなものを考えてた。いつか、本当にライブツアーを開催することになったときに発表するつもりで。
ディアナは無機質な紅い瞳で俺の顔を見上げると、所在無さげに視線を泳がせた。
まるで戸惑っているような目線が右往左往して、差し出していた俺の右手ではたと立ち止まる。
「私、は――」




