糸目か細目の奴って大体黒幕⑦
「安心したまえ! こいつらはキミらを逃さないための見張りさ……さあ、やれ、ディアセレナ!!」
「イエス、マスター」
「っ!」
サンファが左手を振り下ろすと、限定魔装たる夜色の短剣を出現させ、ディアナが猛烈な速度で迫ってきた。
無意識に腰の霊剣リーファライトを抜き、ディアナの刺突を受け止める。小柄な身体ながらも、その速度により痛烈な威力有する剣尖をなんとか凌ぐ。
ディアナはそのまま絶妙な距離感を保ちながら、俺とアイリスとを交互に攻め立て続けた。
俺たちがディアナを傷付けることは当然出来ないため、その攻防は必然的に防戦一方になる。アイリスに至っては盾となる武器も持っていないため、今のところはどうにか見切って躱しているような状況だが、それもいつまで続くか分からない。
最早猶予はない。確信は無いが、ここで賭けに出るしかない。
よく見ろ。ディアナの剣筋を。
……ここだ!
俺は何度目かのディアナとの接触時、夜剣を弾いたり大きく避けるのではなく、敢えて紙一重にその斬撃を受け入れた。
顔面を狙った横薙ぎの一閃を、頰の皮一枚切らせて辛くも避ける。
そして素早く短剣リラを鞘に収め、伸びきった彼女の細い右腕を、両手でがっしと掴み、叫んだ。
「おい、聞こえるか! 俺だ。悠葉だ! お前のマスターで、相棒で……友達の!」
さっき俺がサンファに向かって大声を出したとき……あのとき、俺の様子を察し、その後の行動を予想したアイリスは耳を塞いだが、操られているディアナもまた、同じ行動をとった。
それを見た俺は、まだ彼女の精神は支配されきっておらず、自我が残されているのではと考えた。
そしてそれなら、こうして呼びかけることで、きっとディアナなら応えてくれるはず――
「お願い、しっかりしてよ! あんな奴の支配になんて負けないで!」
俺の背後でその叫びを聞き取ったアイリスもまた、意を汲んで声を発する。
しかし、目の前のディアナは無言のままだ。
俺たちの言葉に反応を示すどころか、自身の腕を捕まえた俺の手を振り払おうともがいている。




