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天壌紅蓮 対 皇煌宝珠⑧

「宮廷魔術師は距離を取って魔法攻撃を継続! 兵士は魔術師の前に立ち、反撃に備えよ!」


「「「「はっ!」」」」


眼前で着弾し続ける魔弾の発光に隠れ、スプリングロードゥナの姿は見えない。しかし、イルミオーネは油断せず次の指示を飛ばし、自らは魔法で迫り上げた足場でスプリングロードゥナの頭上へ向かった。


奴は生きている。この弾幕も足止めにもなっていまい。

だが、その慢心が命取りだ!


「ダリア、気合を入れろ!」


『本気ですかぁ、もぉー……』


「当然、だっ!」


イルミオーネは、丁度スプリングロードゥナの真上に向かうように足場を蹴って、中空へ飛び出した。


響心魔装(シンクロ・デバイス)たるダリアとの間に満足な生命回路(アライブライン)を築けず、己が心素(エナ)をろくに扱えない代わりに、全霊の魔素(マナ)碧槌(へきつい)へ送り込む。


碧槌のサイズがぐ、ぐ、ぐ、っと増し、瞬時に超巨大なハンマーが出現する。

その全体に魔素を纏わせ、振り下ろす。


「これで、どうだ――!」


「うん。残念だったな」


その槌を、魔弾の雨あられから何事も無く姿を現したスプリングロードゥナが、左手で容易く受け止めた。


両の足の裏側から炎を噴出させて浮遊する紅蓮の女王は、受け止めた碧槌を丸めたチリ紙でも投げるような気軽さで放ると、右手を音も無く伸ばし、イルミオーネの首を掴む。


「ぐっ!?」


「へ、陛下!」


超巨大な槌を握ったままのイルミオーネを右手一本で掴み、スプリングロードゥナはゆっくりと上昇を続けていく。その姿を仰ぎ、兵士や魔術師たちがにわかに騒めいた。


「騒ぐな、温度は下げてある。焼け(ただ)れたりはせんから安心しろ」


「はな、せ……!」


「おいおい暴れるな。加減を間違えるだろ、っと!」


ジタバタともがくイルミオーネに向けて呟いたスプリングロードゥナが、天井へと一発の紅蓮の火球を撃ち上げた。空に向かってぽっかりと空いた穴へと向かい、一気に上昇速度を上げる。


足裏から噴出する炎が勢いを増し、比例して上空へ昇る速度がどんどんと上がっていく。

首を掴まれてからほんの数秒後、イルミオーネの目には、トレイユの街並みが遥か地上に見えていた。


「行くぞ」


「――っ!?」


トレイユの特異点である霊山の山頂にも迫るほどの高さでピタリと上昇を止めたスプリングロードゥナが、怪しい微笑と共に呟く。そして一転、凄まじい勢いで降下を始めた。無論、右手に掴んだままのイルミオーネを下にして。


今、イルミオーネの耳には風切り音しか聞こえず、猛烈な速度で地上に向かっている空気抵抗で全身の身動きも取れない。


『陛下ぁ、全身硬化をー!』


かろうじて脳に響いた少女の声に、ほとんど反射で魔法を展開した途端。

落下の勢いと、スプリングロードゥナの炎による推進力全てを乗せ、イルミオーネは背中から地面に叩きつけられた。


「ぐ、が……っ!!」


そして、先ほどの意趣返しとでも言わんばかりに。


「――火焔集渦(フレイムアスガルド)


着弾(・・)したイルミオーネを中心に、紅蓮の炎が炸裂(・・)した。

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