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天壌紅蓮 対 皇煌宝珠⑦

空気が、張り詰める。

つい数刻前までの燃え盛る炎の音も、その更に前に響き渡っていた槌と槍の金属音も、既に遥か彼方。


ただその空間には、穏やかにたゆたう紅蓮の焔だけが静かに揺らめいていた。


紅蓮を纏う、いや、紅蓮でその身を成すスプリングロードゥナが、僅かに浮かんでいた中空から降り立つと共に、それまで視界が釘付けだった全員が、ハッとしたように意識を取り戻した。


そこに居た人間全てが、目の前の存在を目の当たりにした瞬間、ただその神聖性を仰ぐことだけしか出来なかったのだ。


それは、この国の女王たる少女もまた同じ。


トレイユの女王である少女、イルミオーネは、かろうじて残っていた敵対心を振り絞り、乾ききっていた喉から声と共にひねり出した。


「その、姿は……ッ!」


「『神装神衣(しんそうしんい)』――神をその身に()ろす魔法さ。ほんの一部だが、な」


やはり。声に出さずイルミオーネは胸中で納得する。


視覚情報に加え、今のスプリングロードゥナは、その声にさえも神性が宿っているらしく、その言葉の一文字一文字を耳にするだけで身が(すく)む思いだ。現に、周囲の兵士や魔術師たちの中には小さく悲鳴を漏らしている者までいる。


神を降ろす魔法……定位魔法などとは完全に別次元の、神位魔術師にのみ許された魔法ということだろう。確かに今のスプリングロードゥナの姿には、見たことも無いはずなのに、炎闘神アースガルズを彷彿とさせるところがある。


神位魔術師から一転、神が相手か。


「……ハッ! 神だろうが何だろうが、私の邪魔をするものは、この手で排除してくれる!」


イルミオーネは、己自身を鼓舞する目的で大声を張り上げた。

神威に震える身体に檄を飛ばし、遮二無二突っ走る。


「ほぉう? いいだろう。受けてやる」


スプリングロードゥナの顔を成す炎が、美しい笑顔に形を変える。


『……陛下ぁー、直接攻撃は勘弁ですよぉー』


「分かっている! お前たち、私に続いて放て!」


脳内で間延びした注意を喚起するダリアへと言い放ち、イルミオーネは、周囲の魔術師たちに向けて叫んだ。


「う、おおおっ! 石充境・破筍ストーニースペース・トールッ!!」


その場で動こうとしないスプリングロードゥナの眼前で、碧槌(へきつい)を地面に叩き付ける。


自身の魔力のみではなく、属性究極化を施されたダリアを発動体としての魔法。牽制目的で放った先刻の魔法とは違い、究極化の効果が乗った、より高威力へと昇華された石の槍が、スプリングロードゥナに向かう。


その外側からは、イルミオーネの号令に応じてめいめいの魔術師らが放った、地属性に氷属性の、一様に炎への干渉力が高い属性による、魔弾・魔槍・魔矢が追い撃ちをかける。


イルミオーネの岩の槍がスプリングロードゥナの紅蓮の胴体に突き刺さると同時、追い撃ちで放たれた無数の魔法が着弾し、炸裂した。

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