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魔晶個体には魔剣少女⑩

当然そこには、踏みつけ、更なるジャンプをするための地面や木の枝は存在しない。


それらの代わりにあるのは、小さな夜色の魔法陣だった。

何もないはずの空中に踏み出した足――そこを中心とした魔法陣が瞬時に展開され、虚空を飛躍するための一時的な力場となる。


つまり、空中でジャンプして、走って……あの竜のいる湖まで一直線で行けるってことだ!


「うおおおおおっ!!」


思わず気合が入り、叫び声が口から飛び出た。いくつもの魔法陣を展開しては刹那で踏み切り、後方へ蹴り上げ、湖中央に座する首長竜との距離を瞬く間に縮める。


向こうも、標的が先ほど以上の速さで立体に動くことに気付いたようだ。

一たび声高に(いなな)いたかと思うと、巨木をなぎ倒した水球をこれでもかというほど大量に乱発してきた。


初めに俺を追い回していた時と同様の間髪の無さで、ほぼ面に近い状態で放っている。

しかも、一面だけを放出しただけでは終わらず、初撃の水球陣をぴったり追尾するほどの間隔で第二陣、第三陣の面を展開している。面にはとどまらない、壁とでも言えるほどの密度だ。


縦にも横にも隙間なく広がる壁が、木々を蹂躙しながら迫ってくる。先ほどの施設くらい容易く呑み込めそうなほどの規模だ。


俺と竜の間に出現した、超大量の水球による壁。

首長竜目掛け空中を疾走している俺は、必然、この壁に向かって突っ込んで行く形になる。


悪くない手だ。

俺を吹っ飛ばした水柱放出は威力はあるが、ほんの少しとは言えチャージの時間があるうえ、もし躱されたとしたら更なる接近を許してしまう。そしてそれは、今の状態の俺なら容易いことだ。


それよりは、こうした大量放出の水球で、足止めや命中率を狙った攻撃の方が効果が見込めるだろう。


まあそれも――当たればの話だけどな!


水球の壁に対峙した俺は、先ほどまでのようなすぐさま魔法陣を踏み切ることはせずに、その場で膝をグッと曲げて力を溜めた。

足元の魔法陣が、同じ空間に留まる時間と比例するように、空中に大きく広がっていく。


その力を、『跳躍』の意思のみを強く脳裏に描き、一気に解き放つ。


「おおおおお……りゃああああッ!!」


直後、空中疾走の時とは比較にならない跳躍力が生まれ、俺を一瞬で遥か天空へと誘った。

例の施設――三階建ての雑居ビルを飲み込むほどの広大な水球どもを、一息に真上へと飛び越える。

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