表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

273/673

一度は言ってみたいランキング上位のセリフ⑥

「……響心魔装(シンクロ・デバイス)だったか」


「その通り! だが、召喚者に貸し渡すような魔装(デバイス)と同一と侮るな。このダリアこそ、私専用に調律(チューニング)を施した特別製。いかに神位魔術師たる貴様だろうと……敵ではないのだ!」


その一言を皮切りに、階段最上段に立ち塞がっていたイルミオーネが地を蹴った。

階段中腹付近のスプリングロードゥナへ向け、重力を無視したように一直線で向かって来る。


そのままかなりの距離を取ったところから、柄の長さを活かし、碧槌(へきつい)を大振りに振り抜いてきた。


対するスプリングロードゥナは、その大雑把な攻撃を、焔を纏うことも無く右手の金属槍で受け止める。

甲高い金属音が鳴り響き、周囲の空気を震わせた。


「ふむ、動きに迷いは無いな。殊勝にも訓練したか」


「したとも。これも貴様のような侵略者を退け、我が国が世を統べるためだ!」


足場の悪い階段上だというのに、そのことをまるで感じさせない足回りで、イルミオーネが柄の長い槌を振り回す。その(ことごと)くを槍で防ぎ、時に弾きながら、スプリングロードゥナは、眉を顰めた。


……我が国が世を統べる、だと?


「イルミオーネ・トレイユ」


「……この期に及んで、なんだ。フレア・ガランゾ・スプリングロードゥナ」


本名(フルネーム)を呼んだ声音に言い知れぬ圧力を感じ、矢継ぎ早に続けていた猛攻を止め、相手の名を呼び返す。


「まさかとは思うが、心魂奏者(しんこんそうしゃ)の目的は、トレイユの世界征服だとか抜かさないだろうな」


「フン。だったらどうした。同盟の提案ならお断りだぞ」


「いや、それはこっちから願い下げだが」


なにおう!? と憤慨する少女を余所に、僅かな時間スプリングロードゥナは、思想に耽る。


……トレイユ国による世界征服。ないしは世界統一が、心魂奏者サンファの目的?

そんな『安っぽい』ことがあの狐の狙いなのか? 世界規模の精神操作魔法を施してまで暗躍していた理由が、それだと?


有り得ない。そう間髪無く断ずることが出来るほど、スプリングロードゥナの抱くサンファ像と、世界征服という事象には圧倒的な乖離があった。


が、このイルミオーネという少女は、王女という座に就いていながら、腹芸の出来る性根ではない。

あの狐のことだ。それらしい口八丁で丸め込むなんて容易かったろう。


であるならば、一部は事実?

……世界征服の『先』がある?


「――成程」


「っ!?」


数秒の思案で、ある一つの帰結に辿り着いたスプリングロードゥナは、全身を囲うように轟々とした焔を噴き上げさせ、戦意を露わにした。


「どうやら、サンファに直接真意を問い(ただ)す必要がありそうだな」


「フン。何のつもりか知らんが、ここを通すわけないだろ――ダリア!」


『はぁーい』


声高に叫ぶイルミオーネの呼び声に、間延びした声が碧槌から答える。

その声と共に、碧槌の槌部分がぐ、ぐ、ぐ、っと大きさを増していく。


直径が大の大人を優に超えた超巨大な槌を、イルミオーネが大きく後ろへ振りかぶった。背後の兵士連中と魔術師らが蜘蛛の子を散らすように距離を取る。


「食らえ……っ!」


周囲への被害などまるで考えていない甚大な一撃が、スプリングロードゥナの脳天目掛けて振り下ろされた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ