一度は言ってみたいランキング上位のセリフ①
「華灼・八輪!」
スプリングロードゥナが紅蓮に光る右手を振りながら叫ぶと、周囲八ヶ所で爆発の花が咲く。
やや遠巻きに俺たちを取り囲んでいる、兵士と魔術師の包囲が若干開けた。
「どっ、けぇ!」
その隙間を狙い、俺とアイリスが切り込む。
階段をダッシュで駆け上がり、体勢の崩れた兵士を短剣リーファライトで押しのける。
アイリスは自前の身体能力に魔素で追加の強化を施し、魔術師を遠くへ放り投げていた。
しかし、流石に王城だ。守りが堅い。
ガランゾを発った、俺、アイリス、スプリングロードゥナの三人は、トレイユの王城正面に転移を完了した。
突然の出現に驚いている兵士らを手早くやり過ごし、城の内部に突入したまではよかった。しかし今、早くも一階の階段付近でほとんど停止させられている。
スプリングロードゥナが包囲を蹴散らし、俺とアイリスが戦線を押し上げる、といった流れを繰り返しているが、圧倒的人数差のせいでなかなか先に進むことが出来ない。
スプリングロードゥナに前線に立って貰った方がいいのだろうが、既にトレイユへ転移するために半分以上魔素を使ってしまっている。先に進むためとはいえ、本命との戦闘が控えているのに、ここでいたずらに消耗して欲しくは無い。
となるとやはり、物量に押し潰されそうになったらスプリングロードゥナの魔法で蹴散らして、俺とアイリスでじりじりと道を拓くしかないか。
……こんなとき、ディアナがいてくれたら。今は彼女を救いに来ているのだと分かってはいるが、そう思わずにはいられない。
リーファライトももちろん心強い相棒には違いないのだが、荒天島のトレントどもを彷彿とさせる今の状況下では、広範囲に攻撃を繰り出せるディアナの魔装形態の方が適している。
胸に湧き起こる歯がゆさを押し殺しながら、俺は再び兵士の槍を弾いた。
……よし、あとは今目の前にいる魔術師を退ければ、階段を登り切れる!
「そこで止まれ無礼者が! ここをどこだと心得ている!」
そう思った時、その魔術師の背後から聞き覚えのある声が俺を制した。
その声と同時に、岩を丸めた弾丸のようなものが矢継ぎ早に撃ち出され、一直線に俺へと向かって来る。
「ユーハ!」
魔術師に追撃しようとしていた俺の左腕を掴み、アイリスが力任せに引き寄せた。一瞬前まで俺の頭があった位置を岩の弾丸が通り過ぎ、背後の壁に衝突して砕ける。
「うわああ!?」「きゃあああ!」
バランスを崩した俺は、何故か腕を掴んだままのアイリスと重なり合って階段を中ほどまで転げ落ちてしまった。




