金・二・奏③
二曲目を歌う中でも、歌声にユーハへの感謝の想いを込める。
ルナの曲に乗せて、アタシの気持ちが届くように。
……二曲目を歌い終えて、次のMC。
「ユーハに貰ったものは、実はまだまだあるの。まず、アタシにアイドルのことを教えてくれたでしょ?」
ただしそれは、ユーハとディアナの旅に同行するっていう条件付きだったけどねー。
ホントのこと言えば、あの提案を聞いたときは結構戸惑った。
宮廷魔術師の任を受けるだけでも、相当努力したし、その仕事を捨てるみたいなものだもん。
こんなアタシを認めてくれた、陛下を裏切るような気持ちもあった。
だけど……結果的には、陛下は快く送り出してくれた。それは、ろくに魔法を扱えない厄介者を追い出せるからじゃなく、本心からアタシを祝福してのことだった。
「そして、そんな結果になったのは、ユーハがいたからなのよ。アンタとディアナの、おかげ」
八方ふさがりになったアタシが、何かのヒントを得に一人で旅に出ようとしたとしても、きっと認められなかったに違いないもの。
……三曲目に移行する。アタシのテーマ曲、『渚の魔法少女』。
この曲も、ユーハのレッスンを受けて、ディアナとトレーニングを積んだ今のアタシなら、ベロニカで一人で燻っていた頃より、ずっと完成度の高いものを披露できる。
まあ、歌声に関してはフレア様の施術の功績が大きいところはあるんだけど……フレア様に出会えたのも、ユーハが連れ出してくれたおかげなのよね。
そして、三度目のMC。
「ガランゾの迷宮でアタシが絡まれちゃったとき、何て言ってくれたか……ユーハ、覚えてる?」
アタシは、覚えてる。
――アイリスも、いずれ誰かに希望と勇気を与えられるようなアイドルに、絶対になる!
……その言葉が、本当に嬉しかった。
誰からもアイドルとして認められず、迷惑がられてさえいたアタシのことを、アイドルとしてのアタシの成長を信じてくれていると分かる、その言葉が。実はそのあとの、ルナ、の言葉に驚いて、その時は嬉しさが吹っ飛んでたんだけど、それはナイショ。
「今こうしてアンタに歌う前ね。実はアタシめっちゃ凹んでたの。あのサンファに、イヤーなこと言われたの思い出しちゃってね」
エーテルエンドでアタシを洗脳するために、サンファが語ったアタシの過去。
そのことが、いざライブ開始、ってときに急にぶり返してきて、とても歌って踊るどころじゃない……そんな気持ちになってた。
でもね、そんなアタシにも、アンタの言葉が力をくれるの。
マリーネでのライブ直前にディアナが言ってた、『ユーハの手が力をくれる』って言うのと、実は一緒。
ユーハが本心から告げたその言葉を思い出して、アタシは自分に気合を入れ直すことが出来たんだ。




