金・一・迷④
……私は自分自身を責めずにはいられなかった。
もっとマスターと心を通わせていたなら。心魂奏者の支配さえも跳ね除けるほどの強固な生命回路を築けていたなら。いくつもの後悔が湧き起こりましたが、全ては後の祭り。
私がマスターを殺めてしまった事実は、変わらない。
マスターを支えるべき、マスターのためにのみ存在する、響心魔装である筈の私なのに。
その私が、自らの手で、主を手にかけた。
そのことを再び理解した時、私は自身を自身たらしめる……響心魔装の象徴とでも言うべき獣耳を、迷わず斬り落としていました。
私にはもう、マスターの響心魔装を名乗る資格は無い。
かと言って、主の後を追って自死に逃げることすら生温い。
己の存在意義を自ら手放すことが、その時私が自身に課せる最大の罰だったのです――
「――そうして、私は己の罪を雪げる場所を、当ても無く探し続けて彷徨い……フレア様に拾われた」
「…………」
「私を、責めないのですか?」
話を聞き終わり、それでもなお無言のままの私に、グゥイさんが問いかける。
アタシは小さく首を横に振って、その問いを否定した。
「責めないわよ。きっと、その話を聞いていたとしても……アタシたちは先に進んだと思うから」
「……そう言って頂けると、助かります」
鏡合わせに、どこかほっとしたような表情を浮かべるグゥイさんを見て、この人もアタシたちのことを気にかけてくれていたんだ、と改めて認識する。
フレア様とグゥイさんは、アタシたちと敵対してまで、サンファの危険性を訴えていた。結果的にその行為を、アタシたちは無碍にしたようなものだけど、もっと強制的にでも、ガランゾに留めておくべきだったと案じていたんだ。
心の中で感謝の言葉を述べていると、グゥイさんが梳き終わったアタシの髪を、いつもの位置に髪止めで結い上げてくれた。
「お待たせしました。具合はいかがですか?」
「んっ。カンペキ! ありがとね!」
「恐縮です」
寝起きのまんまでボサついていたアタシの金髪も、丁寧に手入れされたおかげで今は絹のような滑らかさを取り戻した。これなら、いつファンの前に出ても大丈夫ね!
アタシのお礼に、グゥイさんがきっちりと腰を折って答える。
「この後は、やはり、ユーハ様のところへ?」
「……うん」
頷いて返すアタシに、嘆息しつつも、そう言うと思っていた、と言いたげな視線を向けてくるグゥイさん。休むように進言しても、結局アタシもじっとしてはいられないってことを、分かっていたんだろう。
さっきまでは、昨日や一昨日と同じように、ベッドの横からユーハにとにかく話しかけるつもりでいたんだけど……
「でも、グゥイさんに落ち着かせてもらったおかげで、ちょっと思いついたことがあるの! 中庭、借りますねっ☆」
ばちこーん、とでも聞こえちゃいそうな程に力強いウィンクを投げて、アタシは客間を飛び出す。
そんな、いつもの調子を取り戻した……意気消沈から立ち直ったアタシを、グゥイさんは優しい笑顔で見送ってくれたのだった。




