島の端っこって何か隠されてそう①
それは、マリーネを出た日の翌朝のことだった。
「う、ウソだぁぁぁぁっっっ!!!」
ルナちゃんのライブ開催まで、いよいよ残り八日と迫った日の朝。例によって道すがらの崖に空けた穴倉の中で、絶望に打ちひしがれた俺は、がっくりと項垂れて地に膝を付いていた。
「ユーハ……」
わなわなと震える俺を、心配そうな顔でアイリスが見つめている。
そのまま顔を上げない俺の肩に、屈み込んだディアナが優しく手を置いた。
「マスター、心中はお察ししますが……仕方のないことです。形あるもの、皆いつかは辿る道なのですから」
「いや……そんなことはない! まだ、まだこいつは頑張れるはずだ!」
落ち着いた声音で諭してくる銀白の少女の手を振り切り、俺は再び『彼ら』に呼びかける。
ここまで俺と一緒に……ずっと一緒に頑張って来たじゃないか!
トレイユの首長竜にビームを食らった時も、ベロニカの荒天島の嵐に揉まれた時も、ガランゾでスプリングロードゥナに身を焦がされた時だって、いつも傍にいてくれた!
本当は、とうの昔に限界だったに違いないのに、それでも、つい昨日までいつも通りに活躍してくれていたじゃないか!
それが、どうして――!
「くそっ……! ダメ、なのか……!?」
俺の呼びかけ。もとい、再起動に、彼らは何も答えてくれない。表情に影を落としたままの、完全なる無言だ。
これは、もう……認めるしかない。
決して認めたくはない。だが、ここまで共に歩んでくれた彼らの健闘。そして献身に、俺は感謝の意志を表明しなければならない。
「今日までありがとう……俺のスマホ……そして音楽プレーヤー……」
俺は、いくら操作してもうんともすんとも言わなくなった電子機器たちへ感謝の言葉を述べ、涙ぐみながら必死に微笑みかけた。
「え? あの、ねえ、ユーハ。それ、チキュウのキカイが動力切れで動かなくなっただけでしょ? そんな落ち込むこと?」
「だけ、とはなんだっ、だけとは! お前だって今日までさんざんお世話になって来ただろうがっ!」
への字眉ですっとんきょうなことを言ってやがる金髪の少女に、俺は徐に立ち上がって反論する。
確かにスマホとプレーヤーは壊れたわけではなく、ただ電池が切れた状態に過ぎない。だが、新たな電力が確保できないこの世界において、それらはほぼ同義だ。
これでもう、エーテルリンクにいる内は、ルナちゃんのMVを見ることも、素晴らしい楽曲の数々を聴くことも出来なくなってしまった。
手持ちの充電器も既に空っぽだし、完全に打つ手が無いんだぞ! 絶望するに充分な理由だろ!




