根っからの裏方気質なもので①
……そしてその後は、文字通り国中を挙げての大宴会が夜通し開催された。
国家転覆の危機から救われた事実と、一時的にとはいえ国民全員が一丸となって危機に立ち向かった高揚感と相まって、マリーネ全土で飲めや歌えやのどんちゃん騒ぎになった。その中心となったのが、他ならぬライブ会場だ。
ステージ、裏方、客席用の長椅子だけの簡素な設備ゆえ、長椅子を早々に撤去、裏方のスペースを取っ払い、ステージだけを残してマリーネ王城前の広場を開放したのだ。
そこに、誰からともなく机やら椅子やら料理やら酒やらを運び込み、誰の舵取りも無いまま宴会がスタート。やがてその騒ぎが城外の街中へと広がり、みんな思い思いに祝い始めた、というような具合だった。
さて、何故会場のステージだけ残されたのかというと、そこは今回の功労者用の特別席とされたためだ。
既にディアナとアイリスがその席につき、次々と運ばれてくる料理を堪能している。今は二人ともライブ衣装ではなく、見慣れた普段着に着替えていた。
横長のテーブルには少女二人と、辞退したのに強制的に引っ張ってこられた俺、その隣にベイン氏と続き、計四人が横一列に腰かけるというような形になっていた。
ここに座らされる前――アイリスに軽々と担がれて椅子に落とされた――なんでこんな記者会見スタイルで飯を食わにゃいけないんだ、と、この世界の人間には通じないとは分かっていながらも、一応俺は反論した。
が、反論したものの、「皆、国を救ってくれた恩人に面と向かって礼を言いたいのだ」と、ベイン氏に申し訳なさそうな顔をされては、とても断れない。
引っ切り無しにやって来る人々は、一応設けられたレギュレーションとして、ステージ前の衝立より内部には踏み込まず、皆その場で口々に感謝の言葉を述べていく。
その都度俺たちは彼らへ対応するのだが、俺は引きつった表情でぎこちなく笑い返すくらいしか出来ていない。ディアナは生真面目に頭を下げている……アイリスなんかは流石に慣れたもので、飲み食いと同時に笑顔で手を振っていた。
人々はその後、思い思いの宴席へと散っていくのだが、ほぼ必ず俺たちが見えるような位置に移動するため、常に誰かに見られていることになり……とにかく落ち着かない。
ベロニカでも魔晶回収完遂後には宴会が催されたが、アレは王城内の一角で開かれ、もっと小規模だった。
あの時も、その賑々しさにどこか落ち着かなさを感じていたというのに、今日はその比じゃないぞ。苦し紛れにパクつく食事も味が全然分かんないもん。味付いてるよな? このスープ。




