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訓練されたファンのムーブをここに④

ステージのディアナとアイリスもまた、客席の反応が思わしくないことに気付いている筈だが、戸惑った様子は一切見せずに二曲目へと移行した。


二人の手短な語りが終わると、ステージの左右に据えられたスピーカー型の魔導機器から、二曲目であるルナちゃんのセカンドシングルのイントロが流れ出す。


このスピーカーも、ディアナ達が使っているマイクもそうだが、地球における機械設備は、エーテルリンクの魔導機器が十二分にその役割を果たしてくれる。


原動力も魔素(マナ)だけで良く、継続して魔素を供給せずとも、予め適切な量を充填しておけば、一定時間稼働し続けるという優れモノだ。それでいて性能は地球の機械と変わらないのだから、ライブとしての環境は問題無く整っていると言っていい。


しかし、アイドルのライブは機械設備だけでは完成しない。

そこに居るアイドルたちの歌と、客席のファンが送る声援とが合わさって初めて、それは完成するんだ。


俺は、二曲目を歌い始めたディアナとアイリスに背を向けると、舞台裏の片隅に置かれた箱の中から、入場客に配った『あるグッズ』の余りを引っ張り出した。


「ユーハ殿? 何を」


「これじゃダメです。このままじゃ、ライブは成功しない」


「何ですと……?」


「ここをお願いします」


俺は何事か戸惑うベイン氏に裏方を任せ、舞台裏を飛び出した。


ライブ会場の外周を周り込み、出入り口から客席の方に入る。


ステージで歌とダンスを披露しているディアナ達を、マリーネ国民たちが無言でじっと見つめている。本当に、上映中の映画館のような光景だ。


俺はそんな彼らの間を駆け抜け、かじりつくくらいの勢いでステージ間際の衝立に貼りついた。


俺の姿を認めた二人の目が(なんでこっちに!?)と言いたげに訴えてくる。それでもパフォーマンスを止めないのは、レッスンの賜物だな、うん。


ディアナとアイリスの奏でる旋律は徐々に高まり、いよいよサビに入った。


……二曲目であるルナちゃんのセカンドシングルは、はつらつとした元気なテンポが売りで、合間に挟むコールも多い、ライブ向けの曲だ。


さあ、今こそ、何十何百回とイメトレを繰り返した、俺のコール技術を活かす時!


「ハイ! ハイ! フッフゥー!」


俺は舞台裏から持ち出した『あるグッズ』――青と黄色のサイリウムを両手に持ち、サビに合わせたコールと共に力いっぱい振り上げた。

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