魔晶個体には魔剣少女③
光は本当に弱々しい輝きで、ひときわ背の高い機器の後ろで発光していたためか、近付くまでは気が付かなかった。
今俺のいる位置は、機器の発光している部分の真横の延長線上。肝心の光っているところが見えない。
先ほどの不安感と一層の緊張を身に帯び、俺は機器の輝きの前に乗り出した。
――そして一瞬、生まれた故郷の冬を思い出した。
いやもちろんここは冬ではない。視界に広がった光景が、冬を連想させるほどに『白』一色だったからだ。
そこには巨大な縦型のカプセルがあった。差し渡し二メートル以上はあるかもしれない。背の高い機器はこのカプセルの一部で、おそらく操作をするための本体部と思われる。光を発しているのはカプセルと、本体部のランプだった。
そのカプセルの中には、一人の少女の姿があった。
年齢は、俺より少し下……十代になったばかりといったくらいだろうか? どんな仕組みなのか、ほんの少しカプセル内部の中空に浮かんでいる。
故郷の雪を思わせるような曇りのない長い銀髪。透き通った白磁の陶器のような肌。
都会の雑踏の中でも、その場の誰もが目を奪われてしまうような、言葉を失うほどに整った造形の少女だった。
流石の俺も、刹那の間その美しさに呆然自失としていたが、彼女が衣服の類いを一切何にも身に着けていないことに気付き、再び刹那の速さで正気を取り戻した。首長竜のビームもかくやと言わんばかりの速度で、眼前の刺激物に背を向ける。
心なしか動悸が激しい心臓を抑えながら、背後の少女について考えを巡らせる。
背の高い機器は、他の機器と違って正常に稼働しているようだった。
電子音こそないが、ランプの明滅や少女の眠るカプセルの発光がその証拠だろう。
この少女が、閉鎖しておきたかった『何か』なのだろうか?
少女を背に改めて部屋の内部を見回してみるも、他に目立ったものは見当たらない。
雑念を捨て、改めて少女に向き直る。やはり恐ろしいまでの美貌だが、人形や作り物には思えない。
この機械は彼女を保護、あるいは、「保存」しておくためのものなのだろうか。
コールドスリープ、だったか。人体を凍結させ、未来で目覚めさせる技術。あれのようなものなのかも……
ふと伸ばした手がカプセルに触れる。触れた個所にじわりと俺の手の熱が広がる。
それが合図だったかのように。
パチリ、と少女が目を開いた。




