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異世界召喚はいつも突然だ②

「やだよ! やらねーよ! 今すぐ元の世界に返せ!」


それが俺の唯一にして絶対の願いだよ!

なんだよ! えーてるなんたらとか魔物とか!


「まあそう言わずに。そんなに帰りたがるなんて珍しいなあ。何か用事でも?」


まあまあ、と手を揺らしながら魔術師が声をかけてくる。


俺の気も知らないで……よくもそんなことが言えたもんだな!


耳をかっぽじってよーく聞きやがれ。

召喚なんてされていなければ行うはずだった俺の予定を!



「俺はな……家に帰って、初ライブを控えた新人アイドル、白風瑠奈(しろかぜるな)ちゃんのコール練習をする予定だったんだよ!!」



今日イチの声量で俺は悲痛な叫びをあげた。この理不尽な状況に対する、どうにも抑えきれない怒りをこめて。


不思議なことに、先ほどまで眉間に皺の寄っていた女王サマや、胡散臭い笑顔のままだった魔術師に、周囲の警戒気味だった兵士たちまで、みんな呆けたような表情をしている。


一瞬の膠着から解かれた魔術師が唯一声を発した。


「……はい? なんて?」


「聞こえなかったのか。ならもう一度言ってやる。俺はな、家に帰って、」


「ああいや、そうじゃない。聞こえているとも。ただ、君の発言の内容がよくわからなかったもので」


なるほど。そういえばここは日本じゃない。

アイドルとかライブとかそんなもの存在しないような世界だ。


コール練習なんて単語も寝耳に水だろう。


「いいか。アイドルっていうのは、自分たちの歌や踊りを見るすべての人を笑顔にし、時に心を震わせ、時に安らぎを与え、時に切ない気持ちを齎し……しかし最後には強い活力を与えてくれる。そんな存在だ」


無駄に広い玉座の間をゆっくりと円状に歩きながら俺は講釈を垂れ流す。

普段大勢の前に立たされる時と違って、不思議とこういう時は緊張しない。なぜかな。話す内容がドルオタの土壌ゆえかな。


そんな俺のある種不気味な気力に中てられたのか、先ほどまでのイケメン美女二人のマシンガントークも鳴りを潜めている。今この空間で発言しているのは俺一人だ。


「俺が応援し続けているアイドルの記念すべき初舞台が、わずか一か月後に迫っている。その舞台で送る声援の練習をするつもりだったと言っているんだ」

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