異世界人ってみんな優秀なの?④
そんなやり取りをした日の夜のうちに雨は止み、翌朝に俺たちは五日間過ごした洞窟を後にした。
足止めを食らったということもあり、洞窟までの道のりより気持ち急ぎ目で先を進んだ俺たちは、洞窟を出た翌日の昼には、四つ目の特異点管理国、マリーネを視界に納めるところまで到達した。
道中ずっと続いていた山の中を抜けると、禿げ上がった地面が目立つ平野に差し掛かる。
マリーネは、そんな平野の中にひっそりと外壁を聳えさせていた。
平野の入口で立ち止まり、遠目に国の様子を眺める。これまでの国に比べ、遥かに外壁のサイズが小さい。トレイユの半分ほどしか無いんじゃないだろうか。
周囲の荒れ地のような環境も相まって、やや寂しげな印象を抱かせる外観の国だった。
そういえば、ここの特異点ってどんななんだろ。
あと少し歩けば現地に到着する、という今になって、遅すぎる疑問が浮かんでくる。
傍らの相棒にその疑問を投げかけると、銀白の少女は口許に手を当て、鈴を転がすような声で答えた。
「あまり詳細については存じませんが、確か、マリーネの特異点は空の上にある筈です」
「……ん? え、どういうこと?」
山、島、地下と来て、今度は空かよ……
いやでもちょっと待って分かんない。空の上に特異点? 島でも浮かんでんの?
追及する俺に、ディアナは頭上の狐耳を申し訳なさそうに萎れさせる。
「……申し訳ございません。それ以上のことは、私にも。アイリス様は何かご存知ですか?」
話を振られた金髪の少女は、こちらはあっけらかんとした表情で首を横に振った。
「アタシも知らなーい。ガランゾのは有名だけど、普通余所の国の特異点について、とか知らなくない? そもそも、ベロニカってマリーネ出身の人いないし」
アイリスの言に、そういうもんなのかな、と少しだけ首を傾げつつも納得する。
空の上にある特異点。気にはなるが、今やマリーネはすぐそこだ。
今ここで議論していても仕方ないし、早いとこ王様とかに話を聞いた方がいいな。
そう思い、先を急ごう、と少女二人に呼びかけ、再び歩き始める。
……ルナちゃんのライブまで、あと十四日。
もうこの異世界で半月が過ぎたことになるが、ペースは悪くない。もうここので最後だしな。
ササッと回収して、十日くらい余裕を持って帰りたいところだ。
それだけあれば、ネット設備という名の万全の環境下で、ディアナとアイリスにルナちゃんの布教も出来るしな! 俺自身もコール練習したいし!




