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異世界人ってみんな優秀なの?①

神位魔術師スプリングロードゥナが管理する国、ガランゾを出立して、五日。


……だというのに、俺たちはまだ次の特異点管理国に到着していなかった。

正確には、ガランゾと次の国とのちょうど中間くらいの山中で足止めを余儀なくされていた。


何故そんな事態になっているのかというと、運悪く、長雨に出くわしてしまったのだ。


ガランゾを出た三日目の夕方のこと。そろそろ夜を越す洞穴なんかを探そうかという話をしていた時、急な豪雨に見舞われた。それはもう唐突で、地球のゲリラ豪雨を俺は思い出した。


大急ぎで山肌に穴を開けて避難し、びしょ濡れになることは避けられたのだが、それから雨足が治まることなく二日が経過している。


その、蛇口を全開放したシャワーの如き雨の勢いは、無理に雨の中を進めば風邪に(かか)ることが必至と思われたので……せめて雨足が弱まるまでは、ということでそのまま滞在を続けているのだ。


「んー……今日もダメそうだな」


洞穴の入口で二日間変わることのない雨を眺め、俺は独り()ちた。ぼんやりと外の様子を見ながら、手の中のミーナ――梨の形をしたミカン味の果物――をかじる。


ガランゾ国内を歩いていた時に街の人たちから貰った果物も、そろそろ底をつく頃合だ。

そういう意味でもいい加減ここを出たいんだけどなあ。


洞穴の奥に視線を戻すと、ディアナとアイリスがダンスの練習をしているのが見える。

俺のスマホから流れるルナちゃんの曲に合わせ、彼女の振り付けを二人がなぞっている形だ。


この洞窟に足止めを食らってから毎日続けているのだが、疲れこそ見えているものの、二人ともとても楽しそうな表情だ。


楽しそう、と言うより、実際楽しいのだろう。


アイドルに憧れを持つディアナと、アイドルを志すアイリス。

同じ目標を持つ二人。友人であり、ライバル。


お互いに切磋琢磨し合えるのが、きっとこれ以上無く嬉しいのだ。


そんな気持ちがあるせいか、二人のダンス技術は目に見える形で上達している。

素人目に見ても、振り付けが揃ってきているのが分かるくらいだ。


豪雨が降り始めるまでは、ガランゾまでの道中と同じようなボーカルレッスンを続けていたのだが、スプリングロードゥナに心素(エナ)()まりと呼ばれていた腫瘍を除去されてからのアイリスは、みるみるうちに歌唱力が向上している。あれから一週間ほどしか()っていないのに。


流石にディアナレベルではないと思うけど、それにしたってとんでもない上達速度だ。


ディアナのダンス技術も、ルナちゃんのデビューシングルに限ってのことだが、長年の積み重ねがあるアイリスに追い付けるほどに成長している。


……異世界の住人ってみんな学習能力が高いんだろうか。

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