女王と魔術師④
「あーはっはっは！ ハハハハハ、ははっ、ハ！！」
「……何がそんなに可笑しいんだ、お前」
「フ、フフ、フ……お、王。これは恥ずかしいところを。いやー、それがですね？ ガランゾの『影』からユーハ君たちの状況を聞いたところなんですけどね」
「なんだ？ 天壌紅蓮を一撃でノして、魔晶を奪って逃げたとかそういう話か？ いやまさかな――」
「それがそのまさかなんですって」
「――は？ はああああ！？ おいおい冗談は止めろ！ 天壌紅蓮と言えば、純粋な戦闘力だけならお前も敵わない、エーテルリンク最強の神位魔術師だろうが！」
「ああいやすいません、ちょっと大げさに言いましたね。一撃って言うのは嘘です。でも、フレア王と敵対して退けた、っていうところは本当らしいですよ」
「いやいやいやいやそんな間抜けな話があるか……神位魔術師だぞ？ 一芸であっても、神に匹敵するだけの高みに達するほどの魔術の使い手のみが、神々より賜る称号……それを持つ者が、あんなひょろひょろのガキ一人に？ いやいやいやいやいやいやいやいや」
「いやあ、そこまでお褒めに預かると、流石の私も照れますねえ」
「お前を褒めたんじゃないわ馬鹿！ ほ、本当に？ 本当にその話は確かなのか？ それほどまでにあの小僧の心素が桁外れということなのか？」
「冗談はさておき……実際、この話は事実のようです。目撃者は少ないですが、ボロボロになったユーハ君たちと、口元に血を滲ませたフレア王の姿を見た者がいますし、迷宮地下深くから、地上を揺らすほどの轟音が響いたという証言もあるので」
「し、信じられん……そこまで規格外の心素持ちだとは」
「いやー笑っちゃいますよね！ 焔を使っての戦闘だけに特化して神位に達した魔術師だっていうのに、この世界にやってきて何日もしない少年に負けちゃうなんて！」
「お、お前笑ってる場合か！ 神位魔術師を挫くほどの心素持ちだぞ、計画に万一の支障が出ないとも限らんだろうが！」
「いやそれは無いですよ。真っ向から普通に戦うからダメなんです。ていうか、そもそも正面から戦り合いませんって。僕、『心魂奏者』ですよ？」
「……それも、そうか。ならばいいんだがな」
「ま、そんなに不安なら続きやりましょうよ。万が一に備えてね」
「いいだろう……しかしお前、少し手加減しろよ」
「そうもいきません。なるべく早めに慣れて下さいよ？ まー計画上無いとは思いますが、王にも戦線に立ってもらう可能性が……億が一くらいはあるかもしれませんから」
「はぁ……もういい、やるぞ」
「ええ。頑張りましょう」
