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いよいよチケット販売会社以外に止められない④

「ああそうだよ。確かな」


「た、確か?」


さらりと言ってのけた女王の言葉に俺は耳を疑う。


国の政務すら任せるほど信頼している筈の部下の出自を知らないのか? 迷宮(ダンジョン)響心魔装(シンクロ・デバイス)として変身したということは、主従契約まで交わしているんだろうに。


薄情な奴だな、と少しばかり憤慨した俺だったが、その解答にはやむを得ない事情があったようだ。


「覚えてないんだよ。あいつと初めて出会った時のことや……再会した時のことを」


「覚えてない……? それって」


「サンファの精神操作魔法のせい、だと思う。ガランゾを訪れる召喚者や魔装についての記憶が極端に薄くなっていてな」


全く覚えていないわけではないらしい。朧げにだが、今よりも若かったグゥイの姿や、彼女を伴ってガランゾにやってきた召喚者の影などが、一応は記憶にある。


しかし、それが今からどれくらい昔のことだったのか。召喚者がどんな容姿、性格の人間だったのか、といった詳細なことは思い出せないのだそうだ。


「召喚者の旅を妨げず、先へ進めるようにしていたんだろうよ。事実、お前の前任に解呪を受けてからそういったことは無くなった。奴のことや、同行していた人間の記憶はしっかり覚えているからな」


「……聞かないのか? グゥイ本人に」


今の話だと、グゥイはかつて、俺のような地球人を主に持つ響心魔装だったということになる。

しかし今の彼女は、スプリングロードゥナに仕え、ガランゾの政務を担う中枢人物だ。


……こういう言い方はしたくないが、彼女がスプリングロードゥナにとっての、スパイのような役割を果たしているという可能性も、無いとは言い切れない。


もちろん、迷宮での戦闘や、その前の女王との息の合ったやり取りを見るに、とてもそうは思えないというのが正直なところだけど。


そんな俺の複雑な心境を乗せた問いに女王は、「あの日のことは割と鮮明に覚えているんだがな」と断ってから口を開いた。


「主のものと思われる血に濡れ、自身のものと思われる血で髪を染めた、あの憔悴しきった顔を、今でも思い出すことがある……あの姿を見た後で、他国の諜報員だなどとは思えなかったよ」


「血、って……」


「何かあったんだろうさ。あの夜、グレイスフィールは一人だった。迷宮の復元期で国外に出ていた私は、無理やり引きずってアレを連れ帰ったんだ」

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