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魔晶個体には魔剣少女①

記憶が流れる。


十年前、道端の『ソレ』に話しかけた記憶。

八年前、『ソレ』は自分にしか見えないと両親に言われた記憶。

五年前、嘘つきだと同級生全員から罵倒を受けた記憶。

二年前、転校二日目で自分の学用品が隠されている光景を目撃した記憶。


七ヶ月前、高校の帰宅途中、CDショップ前で自ら売り子をする、彼女に出会った記憶――


「――ハッ!?」


突如、俺は覚醒した。


カっと見開いた眼にはぼんやりと、無機質なコンクリート然とした天井が映る。あの施設の天井だろうか。

周囲は闇に包まれ、静寂が訪れているのはわかるが、視界が悪い。眼鏡がないのか。


(俺は、どうなったんだっけ……?)


未だ完全に覚醒していない脳の回転を少しずつ早めていく。

徐々に思い起こされる記憶……何度もルナちゃんのグラビア写真やTVでのちょい役シーンがアピールしてくるが、鋼の精神で記憶の隅へ誘導し、直前の光景をプレイバックしようとする。


そうだ。施設に辿り着く寸前で、首長竜のごん太水ビームを食らってしまったんだった。


おそらくだが、竜、俺、施設の位置がほぼ一直線で、俺を飲み込んだビームが、そのまま施設を破壊。

ぶっ飛ばされた俺は施設にぶつかるも、ビームが壁を崩したおかげで致命的なまでの強打には至らなかった、といった具合か。


とはいえ、全身を鈍痛が駆け巡っていた。特に背中と左腕がヤバい。ちょっと張ってみるだけで目に涙が浮かぶほどの痛さだ。


だが、どうやら五体満足で生きているらしい。こればっかりは召喚特典の身体能力向上に感謝しないわけにもいくまい。

通常の俺なら、ビーム食らった時点で間違いなく死んでる。いや、その前の水球一発目で死んでる。


ふーっ、と小さく息を吐きだし、細目になる。少しでも視力を高めながら辺りの様子を窺った。


足元の方に大破した壁とその残骸のようなシルエットが見える。外は既に夜になってしまっていた。

ずっと遠くに、星明かりを反射しているのか、火口湖の水面が煌めくのがかすかに見えた。


首長竜の姿は、無い。


俺が姿を現さないのを、仕留めたと判断したのだろうか?

未だ鈍痛支配する体をゆっくりと起こし、湖の気配を探る。しかし、それでもなお竜が姿を見せる様子はない。


ほっと胸を撫で下ろすも、すぐに気を引き締める。俺が生きていると知れたらまたビームの餌食だ。


虫が這うような速度で、壁穴の死角へ身を寄せる。途中、幸いにも吹き飛ばされていた眼鏡を回収できた。

びしょ濡れだが、レンズもフレームも無事だ。即装着し、焦点の合ったクリアな視界を取り戻す。

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