金銀輝煌⑪
今の俺でも、魔法陣に心素を込めるくらいなら出来る。
アイリスに魔素を流してもらえば、おそらくではあるが、迷宮の外に出ることが出来るはずだ。
納得したアイリスは頷き、俺の肩を担いで立ち上がった。流石の体力……いや身体能力と言うべきか。ひょろひょろの男子高校生一人の体重など、その涼しげな横顔は意にも介していない。普段と変わらない速度でスタスタと歩き出す。
ディアナは先行し、限定魔装形態の小型夜剣で壁の魔晶をくり抜いた。
人頭大の――小柄なディアナが抱えると殊更に大きく見える――石を両手に抱いて戻ってくる。丁度魔法陣のところで合流した。
「ユーハ、お願い」
アイリスは俺に呼び掛けると同時に、足元の魔法陣に魔素を送り込んだ。待機状態に入った魔法陣が金色に輝き出す。
俺も頷き、心素を送り込む。魔法陣が輝きを増し、転移の魔力が金の光と共に徐々に増大していく。
視界いっぱいを覆い尽くしそうな程に輝きが広がる――
「ああ、待てお前ら。少し詰めろ」
「あ、すいません……え。えっ!?」
今にも全身が光に包み込まれる、といった瞬間。
唐突に耳に飛び込んできた声は、紛れもなくスプリングロードゥナその人の声だった。
驚愕に目を見開くと、金色の光の中に、ディアナの肩をポンポンと押す女王の姿がある。吐血したのだろうか、口には血を拭ったらしい跡が残り、肩にぐったりとした女性を抱えていた……気を失ったままのグゥイ、のようだ。
「おま、え……!」
「おいおい。それ以上身体に無理をさせると本当に死ぬぞ? 心配しなくてももう戦る気は無いから、大人しくしておけ」
ついでに帰りたいだけだ、と手をひらひらとする女王は、俺たちの放った渾身の心技のダメージをまるで感じさせない。さっきのフラグを見事に回収してくれやがって。
グゥイの方は完全に気絶している様子なのに、身体がダイヤか何かで出来てるんだろうかコイツは。
あまりに前触れの無い復活だったために、ディアナもアイリスも、勿論俺自身も、ただ戸惑うばかりだ。
もう戦う気は無い、というスプリングロードゥナの言葉の真偽を図る間も無く、遂に視界が金の光に包まれた。




