金銀輝煌⑧
正直、それは俺にも気になるところだが。そうだな、それは外で聞くとしよう。
「アイリス!」
「っ! ハイっ!」
俺はなけなしの力を振り絞り、霊剣を思いきり振り切った。
アイリスも合わせて夜剣を振るい、スプリングロードゥナの藤槍を僅かに弾く。彼我の距離が少しだけ開かれた。
その隙を逃さない。
素早く霊剣を鞘に納めると、俺はアイリスの手の上から夜剣状態のディアナの柄を握り込んだ。
背中から金髪の少女を抱き込む形になる。
……なんか柔らかい。いい匂いがするような気もする。
「ちょ!? あああアンタ、何してんのよ!?」
「おい頭動かすな! 顎に当たる!」
背後から包み込まれる形になったアイリスが、顔を赤らめて腕の中で騒ぎ立てる。
あんまり意識すんなよ……俺も緊張するだろ!
心臓が早鐘を打ち始めたことを、必死に意識の外へ追いやりながら、相棒に呼びかける。
「いける、だろ? ディアナ」
『……はい、マスター。マスターの、御心のままに』
頬に笑みが広がる。何度か覚えのある、あの感覚を感じる。
決行前から成功を確信する、謎めいた万能感を。
「お前、何のつもり――!」
先ほどまでの余裕はどこへやら、すっかり怪訝な表情をしている女王に、俺は笑顔を向けるだけで答えた。息を呑んだスプリングロードゥナが更に後方へ跳び退る。
見えた、いや、感じたんだろう。俺がディアナに心素を込めているのを。
「そんな、馬鹿な……! お前の生命回路は魔導機器が。グゥイ!」
『……機器に異常ナシ! 正常に稼働しています!』
「何の冗談だ、これは!」
不完全燃焼で有り余っていた心素を、ディアナへ全てつぎ込む。
「アイリス」
「わ、分かってるわよっ」
金髪の少女もまた同じように、己が心素を剣へと集中させ始めた。
俺とアイリス。二者の心素が、ディアナの元で一つに交わり、溶ける。
俺たちを繋ぐ糸の存在を感じる。
糸を重ねるイメージだ。三人の、糸ならぬ意図を一つに紡ぎ合わせるのだ。
なに、俺たちにとってそれは難しかない。
たった一言で成せる。
「三人で、行こう。ルナちゃんのライブに」
『はいっ』
「もちろん、よ!」
二人の心素が一体となる。
先の女王の渾身に匹敵する威圧感が生み出される。
ディアナの声が、聞こえる。
『生命回路、三鏡構造を形成。闇夜神路、練度亜変――成功しました』




