金銀輝煌④
「今頃健気に魔導機器を探し回っているか、お前の意図に気付けたはいいが成果が出ずに慌てふためいているか……どちらにせよ、状況は変わらんよ。今からでも遅くない。私たちに協力しろ」
そうすれば命は助けてやる。
言外に秘められたその一言がひしひしと伝わってくる。そして、その言葉に偽りは無いのだろう。
出会ってまだ一日と少ししか経っていないが、ガランゾ国におけるフレア・ガランゾ・スプリングロードゥナという人間がどんな存在であるかは、それなりに察したつもりだ。
トレイユの魔術師サンファとは違い、この女王の言葉には悪意は無い。
ここで白旗を上げれば、宣言通り矛を収め、傷の手当までしてくれるだろう。
だが――そこまでだ。
その先は、今度は俺たちの方が、彼女らの目的を達するまで付き添わねばならない。いくら何でも、俺たちが協力しただけで、ルナちゃんのライブ開催に間に合うまでに事態が収束するとは思えない。
それは即ち、降参することイコール、ルナちゃんのライブを諦めるということ。
先ほど交わした相棒との約束を、投げ捨てるということ、だ。
それだけは。
「ダメだ」
貼りついていた瞼を強引に剝がすように見開く。
焦げ付いた腕に、焼け爛れた膝に、なけなしの力を込める。
今やもう一人の相棒と呼んで差し支えない、白の霊剣を握り締める。
立ち上がる。
「それでも、俺たちは最後まで、諦めない……!」
トン、と押されてしまうだけで倒れそうなほどだったが、俺はスプリングロードゥナへ刃を向ける。
ことここに至り、ルナちゃんのライブは、俺一人の応援欲を満たすだけの場ではない。
ディアナの未来を築き、アイリスの成長を促す、俺たちに不可欠なものになっているんだ。
「……チ。まさか最初の相手がここまで頑固とは、な。流石に私も面倒になってきたぞ」
満身創痍の身でありながら、それでも戦意を露わにする俺に、女王は疲れともとれる愚痴を漏らした。
その一言と、先ほどまでの彼女らの言葉が頭の中で交錯し、一つの疑問を弾き出す。
――最初の相手?
「……そうだ。ひとつ、聞きたいことがある」
「この期に及んで何だ。また無意味な時間稼ぎか?」
無意味と分かっているからだろう。時間稼ぎとしては役に立たない俺の言葉を袖にせず、スプリングロードゥナは先を促してきた。
「この『協力』を要請するのは、俺たちで何番目だ?」
俺の問いに、黒髪の女王は一瞬目を丸くして、
「……ああそうだ。お前たちが『一番目』だとも」
自嘲気味に笑ってそう答えた。




