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金銀輝煌③







「――だからな。お前の判断は間違いだよ」


声が、聞こえる。

霞がかった濃白色の視界の中。俺の身長を優に越える、すらりと背の高い影が言葉を発している。


「あの二人に新たな主従関係を結ばせて、ディアナを戦線に復帰させるつもりだったんだろう? しかしそれは、お前が生きている限り叶わないことだ」


曖昧模糊とした思考の波に、スプリングロードゥナの声が響く。その言葉は、俺がディアナとアイリスを見送ったときの狙いを正しく指摘していた。


グゥイは言った。俺とディアナの生命回路(アライブライン)を魔導機器で乱したと。


ならば、全く新たな回路を別の人間との間に構築すれば事足りるじゃないか。俺はそう考えた。


「その考え自体は間違っちゃいないさ……だが、それは正しく実行出来れば、の話だ。響心魔装(シンクロ・デバイス)は、お前の想像以上に厳重に警備されているんだよ。その身に刻まれた術式でな」


『端的に申しますと、既に主を得ている魔装(デバイス)は、その主の命尽きるまで、別の者と生命回路を繋ぐことは出来ないのです。一人の魔装が結べる生命回路は、最初に選んだその一人だけ』


成程。

だからスプリングロードゥナは、二人を離脱させ、一人時間稼ぎに残った俺の判断を間違いだと言ったのか。


俺が生きている以上、ディアナはアイリスと生命回路を構築できないから。

この戦況が覆ることは、無いから。


「おい、聞いているのか?」


二人の言葉に返事も無く聞いたままの俺に、女王が問いかけてくる。


うるさいな。聞こえてるよ。

ただ、焼け付いた身体が動かないだけだ。


……ディアナとアイリスをこの広間から離れさせ、一人で女王と立ち回って、どれくらいだろうか。


身体に限界が訪れていた。


何百本もの炎線をやり過ごし、何十発もの豪炎の槍を退けた。

純粋な突撃槍(ランス)の刺突や、スプリングロードゥナの体術。新たに披露された炎の魔法からも、必死で身を守った。


だけど、その全てを完璧に回避できたわけではない。


少しずつ被弾した炎熱は確実なダメージとして残り、俺の体を蝕んだ。


一瞬の痛みに回避が遅れ、そこを火尖槍(バスターチャージ)で狙い撃たれた。五体は残っているようだが、仰向けで床に転がったまま、ピクリとも動けない。


ある種の勝利宣言ともとれる二人の言葉を聞き続けることしかできなかった。

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