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神に位する魔術師⑩

そんな様子を見ても俺は緊張を緩めない……いや、緩めることが出来ない。いつ何時、致命の魔法がこの身を貫くか分からないのだから。


それでも、見ることさえできれば、俺なら先んじて回避に移れる。

一人で緊張の糸を張り詰めたままの俺に、茫然を露わにしたスプリングロードゥナが厄介そうな視線を向けてきた。


「この男を止めない限り、あの二人も止まらん。先の攻防の決め手も、そもそもの旅の原動力も……全てはコイツからだ」


――故に、全霊を持って貴様を(くじ)こう。


スプリングロードゥナはそう告げ、右肩に担いでいた槍を無造作に背後に放り投げた。

くるくると回転しながら中空を飛んだ槍は、遥か向こうの、魔晶が埋め込まれている壁の近くに突き刺さる。


唯一の武器を手放した黒髪の女王は、傍らの紫髪の女性に向かって右手を伸ばした。



グレイスフィール(・・・・・・・・)


「イエス、マイロード」



短いやり取りが行われたかと思うや否や、グゥイの身体が解けた(・・・)


その身を深紫色の帯に変じさせたグゥイは、空中で反転し、スプリングロードゥナの右手に集う。


瞬きほどの刹那、女王の右手には藤の花にも似た深い紫色の、突撃槍(ランス)が握られていた。


響心(シンクロ)魔装デバイス……!?」


驚愕に目を見開く俺は、その一言を漏らさずにはいられなかった。

初見から、声のトーンや立ち居振る舞いがディアナに似ているとは思っていたが、グゥイが響心魔装だったなんて……!?


でも、おかしい。響心魔装は召喚者に付き従う存在ではなかったのか。それにグゥイには、響心魔装にあるとされる獣耳が無い――


戸惑う俺の耳に、つい先刻まで目の前で聞こえていた執事服の女性の声が、彼方から響き渡ってくるような不思議なエフェクトを伴って届いてくる。


魔装形態(デバイスモード)藤槍(とうそう)への変換が完了しました』


「さて。やるか」


槍と化した相方の声に、スプリングロードゥナが短く応じた。


その右手から槍に、瞬時に魔素(マナ)が込められるのが見え、


「ぐ、っ!?」


即座に横に飛び退いた俺がいた空間を、目にも止まらぬ速さで駆け抜けてきた女王の刺突が通り過ぎる。


「ほう、避けるか。勘が良いな」


再びスプリングロードゥナが突撃槍へ魔素を込めた。今度は同時に、灯檻(レイルトーチ)と呼ばれた光球も出現する。


的確に狙いを定めて射出される光線を、順番を見極めながら右の霊剣で切り払って後ずさる。


火尖槍(バスターチャージ)!」


そんな俺を、豪炎の槍が三度狙い撃った。グゥイの変じた突撃槍を使っているせいか、規模は先ほどと変わらないが、迫ってくる速度が比較にならないほど速い。


「く、そぉっ!」


絶対に避け切れない。俺は身体を右斜め前方へ、倒れ込むくらいの勢いで傾けた。炎の密度が一番薄いと見えた位置を、霊剣で切り払う。ほんの一部、炎槍の勢いが薄れた。


直後、床に被弾した炎が炸裂し、轟音と瓦礫を周囲にまき散らした。

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