表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

174/673

神に位する魔術師⑧

生命回路(アライブライン)。その単語を耳にしたことがあるのはたった一度。

トレイユの特異点山中の廃墟で、ディアナと出会ったあの時だけだ。



――生命回路接続……心双響鳴(シンクロソウル)に成功しました。今この時をもちまして、貴方様と私の正式な主従契約が完了いたしました。



俺の指に歯を立て、切れた皮膚から流れた一滴の血を飲み下し、彼女はそう言った。


「生命回路は主と響心魔装(シンクロ・デバイス)とを繋ぐ形無き糸。心素(エナ)に加え、互いの感情や体調さえ伝わるこの回路は、響心魔装が主の遺伝子情報を取り込むことで結ばれます。生命回路を紡ぐことで初めて、我々は真の主従の関係となる」


淡々とした調子で語るグゥイ。その声音は、昨日迷宮(ダンジョン)についての説明をしていた時と何も変わらない。ほんの数秒前まで、敵対していた間柄とは思えないほどだ。


「先ほどそれを断ち切る……いや、乱すと言った方が適切ですね。繋がりを乱す魔導機器を起動させました。今この迷宮(ダンジョン)内において、貴方たちは主と魔装の関係ではない」


「何を……! そんな筈ありません!」


顔面蒼白なディアナが、普段は冷静沈着な彼女には珍しく声を荒げる。鋭い視線でグゥイを睨みつけると、一瞬俺を見て、紅の双眸を閉じた。


数拍の沈黙が訪れるも、何も起こらない。


「そ、そんな……」


銀白の少女が、より一層悲壮の色が濃い声を漏らした。おそらく、再び夜剣か鎧のどちらかに変身しようとしたのだろう。


「無駄だ。今お前たちの生命回路は機能していない。魔装形態(デバイスモード)と転ずるのに必要な心素を用立てられない以上、変身も出来まいよ」


スプリングロードゥナがグゥイの言葉に続いた。その声に思わず身構えたが、黒髪の女王は見るからに警戒していないと分かる。


その理由は明らかだった。女王らが下した一手は、俺たちの攻め手を完封するものだったのだから。


どれだけスピードで翻弄しても、手数を増やして隙を狙っても、勝負を決める一撃が無ければ何の意味も無い。


直撃さえすれば唯一の決め手となったはずの、黒刺夢槍(レイ・ディアセレナ)が、使えない。


「お前たちが随分な速度で最深層へと向かっていると聞いたときは、測定が間に合うか冷や冷やしたが……間に合ったようで何よりだ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ