まるでゲームマスターが介入してくるような④
だけどそれは。
「貴方がそれらのことを知り得なかったのは、かつて無い短期間での特異点攻略によることだけが、その理由ではありません。本来必要とされる知識が、提供されるべき相手から提供されていないためです」
機先を制して続けるグゥイの言葉に、俺は閉口せざるを得なくなる。まさしくそう反論しようとしていたところだったからだ。
でも、今のその言い方だと……
「それじゃあまるで、俺を召喚したトレイユの奴らが暗躍してるみたいじゃないか」
俺というか、召喚者に詳細な説明をしていないのは、何かあいつらに裏があるように聞こえる。
それどころか、他国に誤った情報を流しているのも、トレイユの連中の仕業だとまで言っているようだ。
半ば冗談で告げた俺の言葉に、対する二人の女性は眉一つ動かさない。
フレア王が、返答する。
「その通りだ、と言ったら?」
「……は?」
「お前たちの旅には、トレイユ国の……正確には、あの『心魂奏者』サンファの何らかの思惑が確実に絡んでいる、と言っているんだ」
「じょ、冗談にしちゃ、面白くないですよ」
困惑して沈黙する俺に代わり、いや、フレア王の言葉による場の雰囲気に耐えかねたアイリスが、疑念を呈した。
しかし、彼女がどうにか口にした言葉でさえも、紫髪の女性は「根拠はあります」と一言の下に断ずる。
「一つは先に述べた、魔晶回収の任に就かせる召喚者への詳細説明が断片的であること。二つ目は、神位魔術師が常駐していない国へ誤った情報を意図的に流していること。三つ目は、回収した魔素の用途が不明であること」
「……なん、だよ。それ」
いつの間にか乾ききって、カラカラになった喉から頼りない声が零れ落ちる。
「先ほど少し触れたが、平均五年周期で世界崩壊間際になるというのは、あの狐の流した偽りの事実だ。確かに崩壊の兆しはあるが、私は百年後辺りに表面化すると予想している。
とすれば、だ。必要と言われた儀式魔法は不要となり、お前たちが回収した魔素がどうなっているのかわからないことになる。これが三つ目の疑問点になるわけだ……どうした?」
待てよ。
待て。
俺が無言で上げた右手に気付いた女王が語りを止める。
……正直、あの魔術師のことは初見で胡散臭い奴だと思っていた。
むしろこちらの本心や動向を隠し、警戒すべき相手だと。
召喚者に身勝手な都合を押し付けるくらいだ。なにかしらの裏はあるかもしれないと思っていたさ。
だから俺が今言いたいのは、緊張しているのはそんなことじゃない。
「そういうワケがあるから、サンファが怪しいことが確実だから、響心魔装のことを疑っているって言うのか!」
『…………』
鎧姿の相棒は何も言わない。
そんなディアナとはまるで対照的に、フレア王は大きく頷いて見せた。
「ああ。そういうことだ」




