まるでゲームマスターが介入してくるような②
見たところ、警戒していた魔獣たちの姿も見当たらない。文句なしにゴールだ。
「っしゃ! 魔晶ゲットだ!」
「ちょっ!? 急に走り出すんじゃないわよ!」
なんて順調なんだ! これまでの特異点二つが気にならないほどの進行速度! ベロニカで回収した魔晶の魔素も回収しきるころだし、次は何に加工するのがいいか……なーに、それも次の国への道中のんびり考えればいいよな! さあ、次の特異点管理国へ急ごうじゃないか!
……なーんて考え、魔晶に向かって駆け出した俺だったのだが。
唐突に、俺と魔晶との間に割り込むように、中空に魔法陣が展開された。魔法陣はどんどんと輝きを増し、薄暗い広間の中を照らし出す。
「な、なんだっ!?」
「アレって、嘘、まさか!」
その場で急ブレーキをかけ、手で目を覆う。隣のアイリスも同じようにしたかと思うと、驚愕した声を上げた。
目を細めつつ輝きの中心を睨む俺は、どこかで見かけたような既視感を魔法陣に感じてならなかった。
そうだ、アレは、ベロニカでアイリスが使った、転移魔法陣――
「来たな。お早いお着きで」
輝きが納まったと同時に、聞き覚えのある声が耳に届く。
眼前にはこの国ガランゾの女王、フレアと、その側近である女性、グゥイが静かに佇んでいた。
どこか黒曜石のナイフを思わせる雰囲気の女王は、腕を組んだまま、やれやれとでも言いたげに溜め息をついた。
「まさか私が起床する前に迷宮に挑んで、力押しの強行軍でここまで辿り着くとはな……危うく眠りこけている間に、お前たちに国を出られてしまうところだったよ」
「フレア様がもう少しお早く起きて下されば、その心配も無かったのですが」
「そう言うな、グゥイ! こうして間に合ったのだから良しとしろ!」
「…………」
目の前で繰り広げられる何気ない会話に、むしろ不信感ばかり募っていく俺。
こいつら、一体どういうつもりなんだ。
先ほどの魔法陣は、第二の特異点、荒天島へと渡るために俺とアイリスが使用した、あの魔法陣と同じものだ。転移先は、迷宮の魔晶のある部屋になっていたのだろう。
発動には召喚者並みの心素が必要とされるあの魔法陣を、フレア王がどうやって起動したのかはわからないが……
いや、そんなことはどうでもいい。
なんでまた、今にも魔晶を回収するってこのタイミングで、まるで邪魔をするかのように転移してきたんだ。
怪訝な様子で見つめる俺に気付いたのか、フレア王が話しかけてくる。




