表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/673

召喚特典と世界間差異⑧

湖面に揺らめく魔素の膜。その更に奥底の、湖底に向けて目を細める。


陽の光も薄れゆくほど深い闇が見える。その闇に向かい、溶けるように落ちていく魔素を視界にとらえた。


間違いない。魔晶はこの湖の底にある!


水面の(ふち)に近づき、片膝を付いて右手を水面に伸ばす。指先が触れた途端、僅かな波紋が湖に広がった。


水は予想通り冷たかったが、真冬のような身を刺すほどの温度ではない。

山中は日本の春を思わせる、肌に温かさを感じる気候だ。とはいえここは地上より高度があるので、火口湖の水はそれなりに冷たいだろうと覚悟していたが、杞憂だったらしい。


全身水に浸かるのだから、やっぱり服は脱いだ方がいいよな。


いくら身体能力が向上したとはいえ、服を着たまま泳ぐのは危険すぎる。溺れる可能性を考慮するなら、ある程度の寒さはこの際我慢だ。


槍を地面に突き刺し、上着であるブレザーのボタンを外した、その時だった。


湖面が唐突に大きな波紋を生み出した。


いや、正確には、湖面に大きな波紋が突如生まれた、と言うべきか。


円形の湖のほぼ中心に生まれた波紋は、音もなく湖全域に広まり、波を押し寄せてくる。


一瞬、その波打ちに目を奪われた。

ざばあ、と水しぶきが上がり、同時に俺の胸に嫌な予感が沸き上がる。


湖の中央に戻した視線の先には、湖底から押し上げられた水圧で膨らんだ水面。

表面の薄皮一枚下に、魔素の揺らぎなど気にも止まらないほどに存在感のある、巨大な何かの影が見える。


マズイ。ここから離れないと――


槍を再び握りしめ、俺がそう思ったのも束の間、影が姿を現した。


蛇を思わせる長くもしなやかな筋肉を纏った首筋。

そこだけで十メートルはあるように見える大きな胴体。

ある種の狐面にも見える形容をした頭部。


俺の持つ地球知識の中で一番近い生物は、首長竜、だろうか。


現代では絶滅されたと言われて久しい、太古の生物がそこにはいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ