まるでゲームマスターが介入してくるような①
「次!」
「はい!」
「次ぃ!」
「はい!!」
「つぎつぎ次ぃ!!!」
「はいはいはい!!!」
数刻前の罵り合いにも似た掛け合いを繰り返すこと、四十回強。
床面をブチ抜き、階層を下り、空いた穴を塞ぎ、また床をブチ抜き……とうとう俺たちは辿り着いた。
現在いるのは、迷宮の第四十八層。
この階層に降り立った当初から、今までの層には見られなかった潤沢な魔素が視界に写っていた。間違いなくこの層に魔晶があると判断し、最速ルートを通ってきた結果。眼前には、初めて見る大扉が聳え立っている。
大扉の隙間からは、隠しきれない魔素がじわじわと溢れ出し、迷宮内に浸透しているのがわかる。
魔晶はこの扉の向こうにあると見ていいだろう。
『念のためではありますが、警戒を怠らないようにしましょう。魔晶のすぐ近くに頭目個体が控えていないとも限りません』
「そうね。魔晶のある所にはいない、なんて説明は無かったし」
俺の身を覆う鎧と化しているディアナと、アイリスが声を合わせる。そういえばディアナの声聞こえるんだな。
月神舞踏形態のとき、彼女の声は俺の脳内に響き渡るこだまのように聞こえているのだが、ディアナの方に伝える意思があれば、近くの人間にも聞こえるらしい。
そんな相棒と自称アイドルの少女の言に倣い、気持ちを引き締める。
小さく深呼吸し、俺は大扉に手を伸ばした。
「開けるぞ」
頷くアイリスと、言葉は無くとも了承の意を伝えてくるディアナに応じ、俺はゆっくりと大扉を押し開けた。
迷宮自身と同じように石造りの扉は、優に三メートルを越えているだけあり、それに相応しい質量があるようだ。両手にずっしりと伝わる重量を感じながら、踏みしめる足にも力を込める。
ズズ、ズ……と重々しい音を立て、少しずつ大扉の向こうが見えてきた。
そこは広間だった。走り回れるほどの広さがある。
薄闇の向こう、扉の対角線上にある壁面に、ぼんやりと輝く青白い光が見えた。
魔晶だ。辿り着いたぞ!




