地下迷宮のショートカットはこうする②
俺の後ろを粛々と、いや、とぼとぼとさえ表現できるように付いてくるディアナを一瞥した後、その隣を歩く金髪の少女を睨めつける。俺と同じように、銀白の少女の様子を心配そうに覗き込んでいたアイリスは、俺の視線に気づくとぶんぶんとかぶりを振った。
頼れる相棒の様子が変わったのは、この騒音アイドルに引き連れられ、ガランゾ国内の祭りに行ってからだ。絶っっっ対に何かしただろ! 心当たりが無いとは言わせないぞ!
俺の追及の視線に業を煮やしたのか、アイリスは、ああもう! と言いたげに頭を抱え、歩幅を広げて俺に追い付いてきた。
そのまま小声でひそひそと耳打ちしてくる。周囲の冒険者たちの話し声に紛れ、とても背後のディアナにまでは届かない。
「ホントに分かんないのよ! 最初にちょっと逸れちゃったけど、すぐ合流できたし……でも、合流した時から、もうあんな調子だったわ。無理に表情作ってるような感じでね」
「……なら、その逸れた時に、何かあったんだろうな」
そう返すと金髪の少女は、少しだけばつの悪そうな顔を作る。
自分が先走って目を離したせいでこうなったと、後ろめたさを感じているのだろう。
ちょっと嫌味っぽい言い方になってしまったが、どうも、アイリスがディアナのことをさんざ引っ張りまわして、疲れ果てさせてしまったわけではなさそうだ。
……決めつけて睨んだのはちょっと悪かったかな。
はぁ、と溜め息を一つ吐いてから、誤魔化すように、アイリスの背中をバシン! と叩く。
「あたっ!? な、なにすんのよ!」
「悪かったよ。アイリスが原因じゃなさそうだ」
自称アイドルの少女はむくれた表情を浮かべるが、そこにはもう、先ほどの申し訳なさそうな、気兼ねする様子は無かった。
そーだな。そのくらいの方がアイリスらしい気がするよ。言わないけど。
……アイリスの方は俺の言動のせいで、悪い思いをさせてしまったのが原因だと分かるから、こうしてフォローの一つも出来るのだが、ディアナの方は、どうしたものだろうか。
自慢ではないが、俺は友達なんぞまるで出来たことが無いから、人とのコミュニケーション能力はお察しレベルだ。それが自分より幼い容姿の女の子が相手となると殊更に難しい。
アイリス? ああ、何かあんまり女子っぽい感じしないんだよなコイツ。見た目だけは美人なんだけどな。本性知ってるからかな。
二面性が激しい自称アイドルはさておき、ディアナとは、これまでは特に問題なく会話出来ていたが、普段と様子がおかしいとなると、どう接したらいいか見当もつかない。
自分では普通に声をかけたつもりでも、変な気を遣って逆に不自然になりそうだ。
迷宮攻略に影響無きゃいいんだけど……




