独白②
アイリス様と連れ添い、ガランゾ城を後にした私は、数々の屋台と行き交う人々で賑わう主要通りから一本裏手の路地で、一人困り果ててていた。
「……困りましたね」
ふぅ、と手を当てた口許から息を漏らす。
祭りと聞いたアイリス様は、それまで話を聞いていた女王の執務室を飛び出し、一目散に城下町へと駆け出してしまった。城門を出て、主要通りの方へ向かう辺りまでは背中が見えていたのだが、それも束の間、気付けば見知った金色の髪がどこにも見当たらなかった。
要は、逸れてしまったのだ。
探そうにも、祭りのために道行く人の数が多いうえ、私の身体が小さいせいで雑踏をかき分けるのにさえ一苦労する始末。
やむなく、人通りの少ない路地に入って、アイリス様と合流するための手段を模索していたところである。
アイリス様に見つけてもらえれば一番早いのだが、あの調子ではおそらく、祭りの様子を見るのに夢中だろう。自分から出向くしかあるまい。
となるとやはり、限定魔装形態で月神舞踏を展開し、建物の上から探すしかなさそうだ。
『イザという時のために』という名目で、私には、マスターから常に一定量の心素が預けられている。建物の上を飛び歩く程度なら、その内の半分ほども使えば問題無くこなせるだろう。
よし、と私は進路を確認すべく、空を仰いだ。
今いるのはおそらく住宅の間だ。二階建ての住居が同じくらいの高さで並び、路地から天を見上げれば細長く切り取られた青空が見える。
建物の間には洗濯物が下がったロープや、外壁を補修する際などに使うと思われる足場のような橋が架かっている。それを視認した私は、視線を戻し、息を整えた。
「――限定魔装、発動」
スキルを行使する式句を唱えると同時に、私の身体から夜色の帯が伸び始める。
この粒子は、私の魔素とマスターの心素が混じった特別な素因で、響心魔装だけが生産できるものだ。響心魔装の身体を構成するものでもあり、限定魔装形態を行使する際は、人間体と武装とに必要なだけ粒子が割り振られる。
通常時の私は十歳前後の人間体だが、限定魔装形態を発動させると、肉体がより幼くなってしまう。
学舎に入りたての子供と同じほどに縮んだ私は、籠手や脛当て程度に展開された月神舞踏を纏い、地面を蹴った。




