表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

146/673

女王というより姉御⑨

「いろいろ、説明ありがとうございました」


席についたまま、頭を下げる俺。しかしフレア王は、先にアイリスの腫瘍を取り除いたときと同じく、手を振って鼻を鳴らす。


「礼なんぞいらんいらん。これが我々の務めなのだからな……グゥイ」


「畏まりました」


またもやその一言だけで指示を理解したらしいグゥイは、恭しく頭を下げたかと思うと、途端に姿を消した。

ぎょっとして目を剥く俺だが、グゥイの消失と同時に開いた窓と、その向こうで建物の上を高速で走る執事服が見え、尋常でない速度で彼女が執務室を後にしたのだと気付く。


「驚かせてすまんな。アレは私の片腕にして、実質この国を取り仕切っている張本人だから、何かと忙しいんだ」


「ああ、それで……」


他の公務に向かったといったところか。それはむしろ、忙しいところにわざわざ説明してもらって申し訳ないっていうか。


グゥイに退席してもらったということは、必要な説明はすべて終えたということだろう。それなら俺も、ディアナとアイリスを追って祭りに行こうかな……合流できるかはわからないが、迷宮(ダンジョン)の入り口は見ておきたいし。


そう思って、用意された丸椅子から立ち上がろうとした時だった。


「ああ、少しだけいいか?」


「? 何か?」


フレア王が、右手を差し出して俺を制止してくる。

立ち上がるべく前傾姿勢になっていたところを座り直し、俺は胸中で首を傾げた。なんだろうか。


黒髪の女王は、ほんの少しだけ間を置き、目だけで周囲を見回した。視線がぐるりと室内を一周し、最後に俺の方を向いて止まる。


何かを、警戒している?


ふと脳内にそんな疑問が浮かぶも、根拠も無い思い付きで、逆に「なんでやねん」と自分にツッコみそうになった。何に対して、どうしてそんなことをしているのか見当も付かないのに、何故そう思ったのだか。


奇妙な巡回を終えた様子のフレア王が、ぽつりと問いかけてくる。


「お前、あの響心魔装(シンクロ・デバイス)を私に譲る気は無いか?」


「……はい???」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ