女王というより姉御②
だ、迷宮? 冒険者とかいう名称といい、なにそれ異世界お約束じゃん。命名したのは俺の先達じゃなかろうか。
ディアナと、途中から説明に加わったアイリスによると、迷宮はガランゾ国の地下、すなわち山脈内部に存在し、複数の階層に分かれている。中には多くの魔物と、魔素が過集中して結晶化したことによる魔法武器などが落ちていることがあり、冒険者たちは素材や武器を売ったりして金子を得る。
魔物たちは階層をまたいで移動することは無く、したがって迷宮の外へ出てくることもない。
階層ごとに魔物の脅威度は異なるが、基本的には奥に進むほど強力な魔物が出現するため、自身の実力を正しく把握していれば、それなりの利益を得て生還することが可能なのだとか。
ガランゾはそうした冒険者たちと、彼らを支えつつお金を落としてもらえる多くの店舗とで成り立つ国家なのだそうだ。
「へー……いやちょっと待って。俺たちもそこに入んなきゃいけないんだよな?」
「そうですね。おそらくですが、魔晶があるのは迷宮の最下層になるでしょう」
「それってどれくらいかかるわけ? 行くのに」
「んー、冒険者総勢で一階層攻略するのに、平均三日とかじゃなかったかしら? まあ上層はすぐに突破できるんでしょうけど、後半はもっと日数かかると見た方が良いかもね」
……ダメじゃんそれじゃ! なんかこう、裏ワザとかショートカットできる抜け道とか無いのか!
なるほど、ベロニカ王の言葉通り、特異点に辿り着くのに苦労はせずに済みそうだ。
だけど、肝心の魔晶回収まで時間がかかるようじゃ一緒なんだよ!
ぐぬぬどうしたものか……なにか、なにか手は無いか!
そろそろ定番になりつつある、魔晶回収の短縮手順に俺が頭を抱えていると、門兵と話を終えたらしいフレア王が戻ってきた。
「なんだ? もう迷宮攻略の話をしてるのか、気の早い奴め。あの狐の言っていた通りだな」
「……キツネ?」
「トレイユの神位魔術師のことだよ。お前、『心魂奏者』サンファに召ばれたんだろう?」
ああ、あの腹黒クソイケメン魔術師のことか。確かに言われてみれば、あののらりくらりとした物腰とか、胡散臭くて軽薄そうな笑顔とか、どこか狐を思わせる雰囲気ではあった。
で、その物々しい二つ名は何よ?
「神位魔術師の特性を一言で表す称号のことです、マスター」
すかさず補足を入れてくれるディアナ。要するに、あのイケメンの魔術師としての特徴ってことか。
なんか笑顔で死体とか操りそうでヤだな。




