表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

128/673

聖人度合いの偏りがすごい⑥

「ちょっとディアナ~! 量が足りてないんじゃにゃいのぉ!? ほらぁ、もっと飲みなさいったらぁ!」


「あ、アイリス様、私はまだお酒はちょっと……!」


「気にしない、気にしな~い! 水みたいなもんだから大丈夫よぉ」


「あああああ……」


あ、アレは止めないとマズい奴だ。絡みが青天井のアイリスに、ディアナが強引に酒を注がれている。アイリスのアイドルキャラもどっかいってるし、ベロンベロンだなあいつ。


相棒の必死に助けを求める視線が突き刺さってくる。流石に止めに行くか。


壁から背を離し、グラスを一気に煽って空にする。


「すいません、王様。ちょっとあのバカを止めてきますね」


「ええ、そのほうが良いでしょう……ユーハ殿」


喧噪の中心に向かおうとする俺を、ベロニカ王が呼び止める。

アイリスを孫のように眺めていた時や、前任の召喚者について語っていた時とは違う、厳かな声音だ。


立ち止まって振り返ると、一見気の良さそうな王の面持ちの中に、穏やかながら確固たる存在感の、秘めたる意志のようなものを感じた。


「アイリスのことを、宜しく頼みますぞ」


その一言だけで、目には見えないプレッシャーのようなものが伝わってくる。


俺は後頭部をポリポリと掻いたあと、「アイリスがどう思ってるかはわからないけど」と胸中で前置き、こくりと頷く。


「友達ですから」


「……ほっほ、そうですな」


そう言い、にっこりと満面の笑みを浮かべたベロニカ王の表情には、既に先ほどの威圧感とも取れる迫力は見当たらなかった。


流石は国王様。いざというときは迫力あるなぁ。まるで娘が連れてきた恋人を見定めるような……


違うよね。

今のやり取りってそういう意味じゃないよね。


自分で思い当たっておいて急に焦り出す俺。

違いますよね王様。ほっほっほ、じゃなくてさ、そういう言外の、暗喩の問いかけとかじゃないですよねぇ!?


俺にはルナちゃんという既に人生を捧げるべき存在がですね!


「そーれ、グイっといっちゃいなさい! グイーっと!」


「ま、マスター! お助け下さい! マスタぁー!!」


人知れずテンパっている俺の耳を、聞き慣れた二人の声が(つんざ)く。


あーもう! さっきのはただの普通のやり取り! 娘の友人に対しての言葉だということにしよう! ハイ決定!!


俺は大きくかぶりを振って、最早タコの如くしなだれかかっている自称アイドルの腕から、半泣きの相棒を引きはがしにかかるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ